京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会Ⅱ」は、学生が視て経験した活動や作品をWebマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。
本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。
(構成・執筆:文芸表現学科 2年 畠山夏芽)
「ぷちたび!」とは、京都芸術大学 文芸表現学科の学生4人が、京都芸術大学の大階段を下りたところから15分間ただただぶらりと散歩する企画です。
今回の記事は2023年10月25日に叡山電鉄の修学院駅に向かって歩いた思い出を綴ります。
「ぷちたび!」シリーズの他の記事も順次公開予定!
【散歩メンバー】
畠山:この記事の執筆者。水色が好き。
黒田:この企画の発案者。寄り道が好き。
大城:この企画の同行者。本が好き。
石田:この企画の同行者。りんごが好き。
私、畠山は大阪の実家から通学しているため、大学の周辺についてあまり詳しくありません。
しかし他の3人はこのあたりに下宿していることからこの地域が日常なのです。
観光地でもなければ何の変哲もないただの道、私にとって通学路の一部でしかなかったただの道に隠されたワクワクを探すべく、私たちは「たび」に出かけます。
周辺についての解説と補足は3人に任せて私の気になるものをどんどん見つけてやろうと意気込んで出発します。
まず京都芸術大学の大階段を下ります。
アニメの聖地になっていたり、登下校時に多くの学生が使用したりと、大学の中でも象徴的な場所です。
しかし、そんな良い面とは裏腹に、段数が多くかなり急な階段なため、正直あまり使いたくないというのが学生側の本音です。
畠山:入学して一年半経ったけど、未だにこの階段下りるの怖いわ。足滑らせたらとか考たらたまったもんじゃない
大城:私この階段でこけて5段くらい落ちたことあるよ
黒田:えっ?
畠山:普通に危ない……ゆっくり慎重に下りよ
石田:ここは15分にカウントしないしゆっくり行こう
衝撃的な話がサラッと出てきたことに困惑しつつ、おかげでいつもより慎重に下りようと思えました。きっと他の2人も同じように考えていたと思います。
その甲斐あってか、無事4人とも怪我無く下りられました。
(P.S. 最近私もこの大階段から落ちました。たった3段ほど且つ、手すりを持っていたため頭も打たず、大事には至りませんでしたが、数日間椅子に座るときに右側の尻が痛むという事件がありました。みなさまもどうかお気を付けください)
いよいよ15分のカウントスタートです!
今回は修学院駅の方向へ歩くということで、大学から右方向へ歩き始めます。
黒田:ここのバス停ちょっと豪華じゃない?
大城:この辺り(地図上赤印)にも信号あったらライフはもっと学生で賑わってただろうね
黒田:確かにあのライフあんま使わんよな
畠山:ライフ何でも揃ってんのにみんな結局行くのはウエルシア(薬局)やもんな
地図の通り、ウエルシア薬局前の信号を渡らないと次の信号は餃子の王将の辺りまでありません。まさかの向こう側の道に渡るだけでも3分近くかかります。(Googleマップ調べ)
ライフ寄ろうと思ってたのに信号渡るの忘れた! でも王将の所で渡ってわざわざ戻るの面倒くさいな……とライフに行くのを諦めた人がきっといるはずです。
石田:自販機「あったか~い」増えてきたね
大城:お昼は暖かいけど夜とか寒くなって来たもんね
畠山:言ってる間にめっちゃ寒なってくるんやろな。嫌や~
黒田:てか自販機どんどん高くなってきてない?
石田:わかる。コーラ180円……
畠山:綾鷹170円もなかなか!手軽に買える分、仕方ないけど!
大城:家の目の前の自販機100円。一生そうであってほしい
10月末という季節の変わり目だからこそ見られるほっこりエピソードが、物価高による世知辛いエピソードに変わってしまいました。自販機ひとつでこんなにも振れ幅のある会話になるとは思いませんでした。
畠山:やっと信号あった~!
石田:残り9分42秒。10分切ってる! こういう時に限って信号って引っかかるんだよね
大城:やっぱり15分って短いね
信号を待っている間に歩行者用押しボタンを見つけました。
畠山:歩行者用押しボタンさ、イマイチわからんのよな
黒田:どこがわからんの?
畠山:仕組みとかはわかってるんやけど、この間バイトの帰りに信号が待てど暮らせど変わらんくて、よー見たら「深夜帯はボタンを押してください」って書いてあってん。これって何時からを深夜帯と思ってるんかな?
大城:私あったらとりあえず押しちゃうんだけど
畠山:あー絶対そのほうが良い。何となく押さんでもいい時間に押したら「この人押さんでもいいのに押してる……」って思われるんじゃないかと考えちゃって
大城:そんなの考えたこともなかった
石田:ちなみに何時くらい?
畠山:11時半くらい
黒田:11時半は流石に広義として深夜じゃない?
畠山:流石にそうか。でも11時に帰った時は押さんでよかったからさ~深夜帯(何時以降)って書いといて欲しい
大城:今は押さなくていいの?
石田:お待ちくださいって書かれてるから押さなくていいかな
畠山:えっ⁉ あっ、そこで見分けるんか!
仕組みは分かっていると言いましたが、ちゃんと仕組みを理解していませんでした。よく見ると看板にもそう書いてありました。
ずっと押しボタンに怒りをぶつけていましたが、ただ私が無知だったようです。
押しボタンさん睨みつけてすみませんでした。
ここ数日のちっぽけな悩みが解決したところで青信号になったため、念願の向かい側へ渡ります。
畠山:こっちの道、飲食店多いな
大城:王将とかブックカフェとか天下一品もあるもんね
畠山:ここ本店なんやろ? 学校の近くに天一本店あるの普通に凄い事よな
黒田:信号渡らんでいいなら行くけどな~
石田:この道、信号のせいで損しすぎでは?
ふと先ほどまで歩いていた道を見るとなぜか凄く魅力的に映りました。隣の芝生は青く見えるとはまさにこのこと。
今回は近くに信号があったので、またさっきの道に戻ろうと思います。あれほど必死に信号を探していたのに、結局戻ってしまうのは少しもったいない気もしますが、散歩なのでこれくらいの緩さでも良いですよね。
しかし、運悪くまた信号に引っかかってしまいました。
畠山:も~信号のタイミングめっちゃ悪い~
大城:時間制限あるときに限ってそういうことされるよね
畠山:残り4分36秒~時間ないって~頼むから早く変わってくれ~~!
せっかち関西人である私の悲痛な叫びが通じたのか信号が比較的早く青になりました。仕方がないから変えてやるかとでも聞こえてきそうな天からの情けを感じます。
畠山:バックス画材やって! 芸大の近くにこんなおっきい画材屋さんあるのめっちゃ便利やん!
黒田:みてみて、お知らせテラスだって~
畠山:「お預かりします! 地域の案内チラシ各種」やって! 画材屋さんがこういう芸術系の広報も担当してるの良いな
石田:車に置いてるのも面白いし
大城:ね~移動図書館思い出しちゃった
黒田:あ~懐かしい~
畠山:大規模な展示会やったり個人トークショーやったり置いてるの幅広いな
大城:コンサートとか演劇行きたいな~
畠山:あ~いいな。行きたい~
さすが芸大生といったところでしょうか。普段文学を嗜んでいる私たちですが、他の芸術に興味が無いはずもなく、みんな面白そうな展示や舞台のチラシを見つけていました。
かくいう私も舞台のチラシを眺めました。学生のうちに一度くらいは舞台を見に行ってみたいのですが、なかなか一歩が踏み出せず、まだ行けてません。誰か一緒についてきてくれないかな~とひっそりと思っています。
ピピピピ……ピピピピ
黒田:あっ15分経った!
畠山:終わりか! やっぱ短いなぁ~
15分の「たび」も終わりを迎えました。バックス画材には入れずのところで終了です。
15分で歩いた距離は京都芸術大学から約300m、歩数は707歩でした。
思っていたよりも進んでいないし、歩いていないなと思いましたが、色々なものに目を向けるためゆっくりと歩いていたことと、こちらは想定外でしたが信号に振り回され続けていたことが原因だと思います。
畠山:全然進んではないけど、ちょっとだけ周辺に詳しくなれた気がするわ。あとシンプルに天気がいい日に散歩するのめっちゃ気分良くて楽しかった~
石田:だね。下宿してるけど修学院方面はあんまり行かないから面白かった
黒田:私は逆に普段当たり前に見ている道だけど、みんなが新鮮な思いで歩いているのが見れて楽しかったな~
大城:楽しかったね~「ぷちたび!」って信号待ちも時間に含んじゃうミニマムさがいいよね
畠山:それはそう! でもほんまに信号にはだいぶ振り回されたわ……
信号に文句はありましたが、全員大満足の結果に終わりました。
普段なら5分で済んでしまうようなたった300mのどこにでもありそうな道なのですが、そんな道にも些細な面白さというものは転がっているものなのだと、改めて気づく良い機会になりました。
15分という短い時間ながら、10月末ならではの季節の流れや時代の流れ、3人の私とは違った目の付け所などを知ることができた有意義な散歩だったと思います。
これからも定期的に散歩して、小さな発見ができる日々を送れたら良いなと思いました。
(構成・執筆)
畠山夏芽
2022年度 京都芸術大学 文芸表現学科 クリエイティブ・ライティングコース入学
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