COLUMN2023.10.18

「菓子屋はデキモノと一緒で大きくなったら潰れる」亀屋清永

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  • 京都芸術大学 広報課

※職人や伝統文化、それに関心を持つ企業や欧州の大学と協働し、イノベーティブな活動を展開するKYOTO T5(京都伝統文化イノベーション研究センター)のコラムです。

 

亀屋清永

八坂神社の近くにある、創業1617年の亀屋清永。京都で400年以上続く老舗の和菓子店の17代目社長兼和菓子職人である前川清昭さんにお話を伺いました。

千年以上続くお菓子、清浄歓喜団

京都には京菓子という永いお菓子の歴史があります。看板商品である清浄歓喜団は千年前から姿を変えていないお菓子で、日本で唯一、亀屋清永さんが作っています。清浄歓喜団を御所に納めたこともあり、八坂神社とは江戸時代のころから永いお付き合いがあるそうです。他にも繋がりのあるお寺や神社も全国にたくさんあります。

「数は北海道から九州までいっぱいあるので勘定していません。総本山の浄土宗だけでも全6000箇所繋がりがあって、全部は入っていませんけれどもかなりの数です」

清浄歓喜団の頭のクルクルしたところは前川さんの一家相伝の技法で巻かれており、今売られている清浄歓喜団のほとんどは前川社長本人が毎朝一つ一つ巻いており、形にするのはすべて手作業です。秘伝の技術でつくっているため、テレビの取材を受ける際も清浄歓喜団を作るシーンは絶対に撮らせないそうです。材料にもこだわっており、例えば小豆なら、これよりいい小豆はないなと思う小豆を使用するそう。

「作る時のこだわりは、材料の惜しみはしないこと。一番ええもの使わなあかんですよ。材料を惜しまず、絶対美味しいものを作るのがモットーです。一板に63個並べるんですけどね。それを一日に八板。めっちゃくたびれますよ。まず綺麗に早く包むことが大事です。生菓子はあんまり長いこと包んだりしていると手の温かみが移ってだめなんです。やっぱり集中してますよ。」

前川さんが思う和菓子の魅力はとても応用が利くこと。栗をブランデーに漬けてつくった『大人の栗羊羹』やいちごのドライフルーツを使ったきんつばの『吟角』などをご自身のアイデアで商品化しています。和菓子をお茶と一緒に食べるだけでは食べる場面が少ないので、どのお菓子もお茶にもお酒にも合うようにつくられているそうです。

 

お菓子は侘び寂びの世界

亀屋清永のお菓子は都をどりや温習会*などで使われます。温習会の時にお客さんがきてそのお返しの時に使われることが多いそう。芸妓さんがちょっとした手土産に持っていくのに「なんかええのない?」と個人で買いに来ることも。芸妓さんに人気のお菓子は小分けにできるものや季節のものが多いそうです。

※毎年10月、祇園甲部の芸妓・舞妓が京舞井上流に伝わる伝統的な舞を披露する公演のこと

「お菓子っていうのは大体早いんですよ。紅葉の時はもっと前から季節のお菓子を出しますからね。実際に栗が出てくるまでに栗のなんかを作るとか。12月になったら正月用の梅を使いますからね。なんでも早どりですから。北野神社の梅花祭を過ぎたら桜になってるからね」。

前川さんは京都のお菓子は尾形光琳の影響がものすごく大きいといいます。

「京都のお菓子を例えると桂離宮だと思ってください。侘び寂びの世界ですね。関東のお菓子は日光東照宮。京都のお菓子はこれで菊か?桜か?っていうほわーんとしたものが多くて。関東のものも立派なんですけどね。関東と京都の違いといったらそこですね。やっぱり京都っていうとお菓子の発祥の地ですからね。」

前川さんはいろんな文化があることがお仕事をするうえでの京都の良さ、祇園の良さだといいます。

「やっぱり昔のものを大事に残してるのがいいですね。京都と鎌倉とかは昔からある街で、中でも祇園は特別な町ですね。僕らは毎日舞妓さんや芸妓さんを見てるけど地方から来た人には珍しいですよね。写真に納めようとしているところを見ると、京都は最大の歓楽街だと思います。やっぱり旅行から京都に帰ってきたらホッとします。」

次世代へつなぐ

前川さんは和菓子職人だけでなく社長として営業や経理も行っており、特に人材育成に力を入れています。

清浄歓喜団以外のお菓子をつくる工場にもよく顔を出して社員さんに職人として素早くいいものをつくるためのアドバイスを沢山しているそうで、次の和菓子業界を担う世代の育成に努められています。

また、ご自身が仕事を始められた時には社長の息子という立場でしたが、一社員として雑用から始められたそうです。仕事に対して社長だけでなく一職人の立場になって考えたり、謙虚に社員の皆さんと仕事をされているのが印象的でした。

そんな前川さんの今後の展望は今までのように味と品質を変えることなく保ちながら作り続けていくことだそうです。

「先祖が言った言葉の中に『お菓子屋はデキモノと一緒で大きくなったら潰れる』というのがあります。店が大きくなりすぎたら味を一定に保つのが難しくなる。今も昔も菓子屋は暖簾の影で密に咲く花です。これからはまたちょっと違う感覚も出てくるやろうと思うし、またそれはそれで。よしあしを見ながら頑張っていきたいですね。」

 

文:
安彦美里(京都芸術大学 基礎美術コース)
鈴木穂乃佳(京都芸術大学基礎美術コース)

写真:
中田挙太

亀屋清永HP:
https://www.kameyakiyonaga.co.jp/

KYOTO T5(京都伝統文化イノベーション研究センター)HP:
https://kyotot5.jp/

 

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