障害者の方々が制作したアート作品を多くの人に見てもらい、理解を広げたい―。そんな思いで、京都造形芸術大学こども芸術学科の2年生5人が屋台を制作しました。搭載するのは、滋賀県甲賀市の福祉事業所「やまなみ工房」の利用者が手掛けたアート作品。京都市内の観光地でお披露目し、多くの通行人の注目を集めました。
屋台を制作したのは、木村凜香さん、小濱いづみさん、土井菜々子さん、中田茉友子さん、諸井まりさん。こども芸術学科の彦坂敏昭先生がかつてゼミの一環でやまなみ工房を訪れた縁があり、今回のプロジェクトが実現しました。
「縁プロジェクト」と銘打った活動の一つとして行われた今回の目標は、屋台を作り、作品を載せて多くの人に見てもらうこと。「ご縁がある屋台」を共通テーマに、5台で五角形を表現したり、5台が連なって動くことで「つながり」を想起したりする屋台を目指しました。話し合いを重ねた結果、シンプルな構造にした上で作家のコンセプトに合う装飾をそれぞれが施すことになりました。
メンバーはまず、施設や利用者について深く知ることからスタート。事業所を訪れ、施設の概要や制作風景を見学し、京都市内の工房兼売場も訪ねました。
8月中旬には利用者の方々の一日に密着し、制作や食事をともに過ごすことで創作方法だけでなく、「何を思いながら、どういうことをしながら創作するのか」といったことを本人から聞いたり感じ取ったりして、屋台のイメージを膨らませました。
その後、大学内の共通工房「ウルトラファクトリー」の木工室で2日がかりで5台を完成させたメンバー。1週間ほどで装飾も終え、いよいよお披露目の時を迎えました。
木村さんは、思いを寄せる男性をテーマに粘土作品を作り続ける女性を担当し、屋台を神社に見立てて恋みくじを設置。小濱さんはジンベイザメとカジキマグロをモチーフにした作品を作る男性から連想し、海に飛び込むイメージを持ってもらうためにカーテンを設けました。
土井さんは緻密な構成と色遣いで地図を仕上げる男性の作品を引き立てるため、あえて装飾をせずに虫眼鏡を用意してじっくりと作品を鑑賞してもらう環境を整えました。中田さんは膨大な数のボタンを使って雑貨を作る女性の作品に合わせ、屋台の至る所に各地から取り寄せたボタンを貼り付けました。諸井さんはアニメのキャラクターをイメージして色とりどりの三角形をデザインする女性の作品のコンセプトに合致した装飾を施しました。
多くの人の目に止まってもらうため、活動場所となったのは平安神宮に近い岡崎公園と銀閣寺そばの哲学の道。国際博物館会議(ICOM)開催中には、外国からの参加者に対して積極的にプロジェクトに関することや作品の魅力をアピールしました。
このプロジェクトはNHK Eテレの情報バラエティー「バリバラ」で密着取材を受けており、タレントのりゅうちぇるさんも活動に参加いただきました。学生や利用者の方々と一緒に屋台を引き、通行人にアート作品の魅力やプロジェクトの取り組みについて呼び掛けていただきました。
スタジオ収録も行われ、一連のプロジェクトを追った内容は、10月3日(木)午後8時からのバリバラで放送されます。再放送は10月6日(日)午前0時(土曜深夜)から。公式テレビポータルサイト「TVer(ティーバー)」でも10月3日~9日まで見ることができます。アート制作に励む障害者の方々を応援しようと奮闘した学生たちの頑張りをぜひご覧ください。
岡崎公園での撮影:谷口あずみ(美術工芸学科写真・映像コース2年生)
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谷口 あずみAzumi Taniguchi
2000年京都生まれ。美術工芸学科 写真・映像コース 2018年度入学。音楽と映画が好き。夏が苦手。