INTERVIEW2018.05.25

舞台

和太鼓の可能性を探求する「道」―「鼓童」代表 船橋裕一郎さんインタビュー

edited by
  • 山月 智浩
  • 添田 陸
  • 高松 映奈

佐渡を拠点に活動している太鼓芸能集団「鼓童」。1981年にベルリン芸術祭でデビューを飾って以来、世界50の国と地域で6000回を越える公演を行い、今年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL’18」への出演も決定しています。代表を務める船橋裕一郎さんは、京都造形芸術大学の卒業生であり、学生和太鼓チーム「悳」設立メンバーの一人。6月に京都芸術劇場春秋座で開かれる特別公演2018「道」の演出を手がける船橋さんに、「鼓童」の活動や和太鼓の魅力についてお話をうかがいました。

―歴史遺産学科ご出身でいらっしゃいますが、どんな学生生活を送られていましたか?

 当時は学科の先生に現場を紹介してもらって、京都駅が建つ前の発掘調査に携わったりもしていました。それが徐々にクラブ活動に力を入れるようになって、太鼓にのめり込んでいきました。当時の学科は女性ばかりだったので、ある先生には「貴重な男手だったのに」と言われてしまったのですが。
 でもその田辺昭三先生は、卒業後に鼓童へ進むと決めたことを喜んでくれました。先生が亡くなったあと、奥様から「これはたぶん、あなたのことだと思う」と言って先生の書きかけの手紙を頂いたことがあって、そこには「良い時は初心を忘れず、思うようにならない時は慌てず深呼吸でもしなさい…」といったことが書かれていたんです。その言葉は、今でもすごく大切にしています。先生とも出会えた京都造形芸術大学という場所は、自分の原点という実感が強くあるので、こうして仕事として継続的に帰ってこられるのはうれしいことです。

―太鼓にのめりこむようになったきっかけは何だったのでしょうか。

 「伝統芸術演習」という授業のひとつに和太鼓のデモンストレーションがあって、友人に誘われて参加したのがきっかけでした。そこで初めて演奏を聴いたときのインパクトが、今も太鼓を続けるエネルギーになっています。
 その後、学生の間でもクラブ活動として設立しようという動きが起こってきて、髙木克美先生(和太鼓教育センター所長)を中心に今の「和太鼓 悳」ができあがっていきました。まだ何もわからない中、どうやって練習を進めていくかというところから始まって、みんなで模索しながらチームを作り上げていく過程はすごく面白かったです。染織コースの子が卒業制作として舞台衣装を作ってくれたり、能楽部の子と一緒に何かできないかと話したり、そういったつながりは今でも残っています。

―その後、数ある和太鼓チームの中から「鼓童」を選ばれたのはなぜだったのでしょうか。

 子供の頃から太鼓や音楽に親しんでいたというわけではなかったので、しっかり修行ができる場を、と考え、2年間基礎を学べる研修所がある鼓童を選びました。朝から10㎞のランニングなど自分を追い込む環境に2年間身を置き、そこから舞台に立つようになりました。
 研修所では太鼓や歌、踊りだけではなく茶道や能・狂言、農作業まで、日常生活の至るところでカリキュラムが組まれていて、必ずしも太鼓や舞台に直結する内容ばかりではなかったんです。でも舞台に立つようになると、その経験こそが今の自分の引き出しにつながっていると実感することがあります。今思えば、田んぼに直に足を踏み入れた感触やみぞれに打たれながら走った感覚は貴重なものだったと思います。

Photo: Takashi Okamoto

―オーケストラやボーカロイドの初音ミクなど幅広い音楽とのコラボレーションにも挑戦されていますね。

 いろんな方とコラボすると耳や肌の感覚の違いを感じることができるので、すべてのものを一回体に入れてみて、その反応を確かめるという行為がいかに重要か気づかされます。それが表現として直接的につながるかどうかはまた別の話ですが、その意識を忘れず、2017年には初音ミク*1や演歌歌手の石川さゆりさん*2などさまざまなジャンルの方とのコラボに挑戦してきました。初音ミクの場合、精巧に作られていてすでに完成しているので(笑)、こちらが合わせていくしかない。そういった制約がある中で、いかに彼女を引き立てながら「鼓童」らしさを出せるかということにも挑んできました。私たち自身は初音ミクを聴く機会ってあまりないのですが、それは初音ミクファンの方もきっと同じですよね。このコラボがないと「鼓童」を知ってもらうこともなかっただろうし、それぞれがお互いを知るきっかけとなったのはよかったです。

―船橋さんが思う太鼓の魅力とは、ずばり何でしょうか。

 「ドン」という単純な音の中に、無数の響きや聞こえ方が内在しているのが太鼓という楽器です。そして、その音の可能性はまだまだたくさんある。それを発掘するためのチャレンジをしていくのが私たちの使命だと思っています。私は伝統芸能と違って新しい音や表現を生み出していく活動をしているので、太鼓という原始的な楽器の中にどんな可能性があるのか、今でもとても興味をかき立てられます。

―海外でも公演されていますが、反応はいかがでしょうか。

 日本への興味、太鼓への興味などその反応は人によってさまざまですが、すごく喜んでいただけているように感じます。音で直接伝わるものなので、言葉が要らないのも太鼓のいいところだと思います。太鼓って、どの国や地域に行ってもだいたいあるんですね。叩いて音を鳴らす。根元的な欲求を満たす、そういう楽器だと思っていて、老若男女問わず伝わりやすい。そういう魅力があるので、足踏みで感動を表現されることもあれば、演奏後にスタンディングオベーションに包まれることもあり、その反応はさまざまです。東京と大阪でも全然違ったりするので、その土地によって違った反応が見られるのは面白いですね。

―これから挑戦したいことはありますか。

 これまで自分たちがやってきたことを「振り返る」という作業をしてみたいと思っています。前身の「佐渡の國 鬼太鼓座」時代を含め、1971年から半世紀近く脈々とやってきたことが何だったのか、言葉にしたり型のようなものを作ったりしてみることで、新たなチャレンジに進んでいきたいと考えています。また、私自身プロレスや落語が好きなので、そういった分野と関わるというのもやってみたいことの一つではあります。選手入場のタイミングであったり、上方落語ならお囃子がありますよね。そういった物語の中に自分たちの音を入れてみたりだとか……夢はふくらむばかりですが(笑)、まずは自分たちの軸というものをしっかり固めてみたいなと思っています。

―特別公演2018「道」への意気込みをお願いします。

 近年はミュージックビデオの制作など、若い方にも太鼓の音色に触れてもらえるような取り組みもしています。せっかく大学で公演をさせていただけるので、学生の方にも来ていただきたいです。春秋座は音の響きがよく、私たちも楽しみにしている会場の一つなので、ぜひ生の和太鼓を感じていただければと思います。

 

*1:This is NIPPON プレミアムシアター 初音ミク×鼓童スペシャルライブ(2017年)

*2:石川さゆり『45周年記念リサイタル』

鼓童 特別公演 2018「道」

日時 6月16日(土) 13:00
会場 京都芸術劇場 春秋座
チケット 一般席完売につき、補助席を販売しております(窓口・お電話のみ)
補助席 4000円均一
補助席(学生&ユース) 3000円
問合せ 舞台芸術研究センター(平日10-17時) 075-791-9207

http://k-pac.org/?p=4949

 

  • 山月 智浩 Tomohiro Yamatsuki

    1998年大阪府生まれ。京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科2017年度入学。いろんな世界に飛び込んでみたいとの思いから瓜生通信編集部に参加。企画の立て方や編集を学んでいる。

  • 添田 陸Riku Soeda

    1998年茨城県生まれ。京都造形芸術大学 文芸表現学科2017年度入学。文章や構成について学んでいる。文章によるビジュアルの変化を追求している。と同時に美味しい珈琲も追及している。

  • 高松 映奈Akina Takamatsu

    1997年長崎生まれ、大阪育ち。京都造形芸術大学 美術工芸学科 現代美術・写真コース 2015年度入学。好きなものは植物と音楽。台所の床に居ると落ち着く。

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