NEWS2021.04.19

京都デザイン

遊び、食べ、学び、仕事もできる市役所カフェ。― 亀岡市役所「開かれたアトリエ」空間プロデュース

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  • 京都芸術大学 広報課

本学は昨年、亀岡市と協定を締結し、内閣府選定「自治体SDGsモデル事業」を共同で推進することになりましたが、その一つの形として、2021年4月14日(水)亀岡市役所内に「開かれたアトリエ」がオープン。かめおか霧の芸術祭総合プロデューサーを務める空間演出デザイン学科の松井利夫先生、空間の設計に携わった副学長の上田篤先生などが出席し、オープニングセレモニーが行われました。


市役所の地下一階に完成した「開かれたアトリエ」は、カフェやレストランのほか、市民を交えたワークショップやコワーキング、作品展示、亀岡の農産物の販売、各種イベントなどにも使えるスペースとして生まれ変わりました。多様な使われ方をする中で、多くの人々が出会い、イノベーションを創出することが狙いです。その設計を本学が担い、学生や卒業生たちと共同で整備いたしました。

 

亀岡のKをパターンにした什器をペイントする学生たち。藍染の暖簾やサインの制作、天井や什器のペイントなどを担当しています。

 

本学はこれまで、亀岡市の特長である「霧」をキーテーマに2018年より開催してきた「かめおか霧の芸術祭」の運営に協力するなど、地域に眠る資源や魅力に光を当て、アート・デザインの力で課題解決や地方活性化を図る取り組みを共同して進めてきました。

亀岡市では芸術祭をハブとして、農業や環境などさまざまな政策にアートを融合させることで、地域課題の解決を進めています。そのような市の取り組みは、2020年7月に「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」として内閣府から選定されました。

そして亀岡市が魅力あるまちづくりをさらに推進するために、本学と協定を締結し、自治体SDGs モデル事業として提案した「かめおか霧の芸術祭×X(かけるエックス)」の取り組みを推進することになりました。
そのひとつの事例が、今回の「開かれたアトリエ」開設になります。


アート・デザインの力で課題解決や地方活性化を。― 京都芸術大学が亀岡市と協定を締結
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/696

 

もともと市役所の地下一階は、職員以外の方でも利用できるレストランでしたが、市役所の中でも利用頻度が低いエリアだったそう。地下ということもあり、少し暗いイメージもあったため、今回のリノベーションでは、市民の方々も集いやすいよう、全体的に明るく暖かみのある空間へと生まれ変わらせました。

 

「開かれたアトリエ」を計画するにあたって、昨年10,11月に市民の方々にお集まりいただき、ワークショップを実施。すると参加者の方々から、図書コーナーやこどもが遊べるスペース、くつろぎのスペース、情報発信や収集ができるようなスペース、亀岡の特産品を販売できるスペースなど、さまざまなアイデアが次々と出てきたと言います。

コミュニティデザイナーの山崎亮さん(studio-L代表)を招き、市民の皆さんとワークショップを開催。

 

松井利夫先生は、「ワークショップでは、思いも寄らないアイデアや奇抜な意見、そして心にしみるような要望など、いろんなものが出てきて『これはいったいどうなっていくんだ』と、まとめようがなくてどうしようかと思うほどでした」と、参加者の皆さんの積極性や創造性に驚いたと言います。

かめおか霧の芸術祭総合プロデューサーを務める空間演出デザイン学科の松井利夫先生

 

そのさまざまなアイデアや提案をまとめ、設計に落とし込むにあたり、全体の監修を担当した副学長の上田篤先生は、空間の “柔軟性” を大事にしたと言います。

「ここにあるさまざまなスペースは、そのほとんどがワークショップで生まれてきたもの。つまりこの空間を作ったのは、市民のみなさんの成果です。それをどう具現化するかということを本学のチームで検討していきました。これから刻々と変わる状況に対して柔軟に機能するような空間デザインを意識しています。
本学や他の大学、企業や自治体など、産官学のさまざまな人々が出会い、連携が活性化する場所になるよう、心を込めて設計をさせていただきました。この場所が亀岡市内だけではなく、亀岡の外とも、世界ともつながる『開かれたアトリエ』になることを期待しています。我々もここに関わりながら刺激を、イノベーションを生み出していきたいと思います」。

空間の設計に携わった副学長の上田篤先生

 

さて、それではアトリエの様子をご紹介していきます。各コーナーやスペースは「かめおか霧の芸術祭」を中心に、さまざまなアーティストと協働して作られています。

また、取り組みのことを知った亀岡の方々、そして亀岡以外の方々から「うちの材料をぜひ作ってください」と次々と協力や応援の声が上がったそうです。中でも「三浦製材株式会社」からご提供いただいた良質な無垢材は、38度という低温で乾燥されていることから「木がそのまま生きている」と言います。

 

図書コーナー


空間演出デザイン学科の卒業生で「霧の芸術祭」のプロジェクトディレクターを務める辰巳雄基さんが、選書も含めて担当したコーナー。亀岡市立図書館の本が約400冊揃っており、季節ごとにテーマを決め、本を入れ替えるそう。トークイベントも予定しています。

 

 

キッズ・くつろぎコーナー


こどもたちがさまざまな学びを感じられる可変式のコーナー。ゆったりとくつろげる大きなビーズクッションも設置。

 

 

資材循環コーナー


ウルトラプロジェクトなどにも参画している山田毅さん(只本屋)と矢津吉隆さん(kumagusuku)による「副産物産店」が担当したコーナー。「副産物産店」は、アーティストのアトリエから出る絵画、彫刻、版画、陶芸、デザインなどの廃材を“副産物”と呼び、副産物に新たな価値を提供するプロジェクト。こちらでは、自由に持ち帰りができる資材や物品のほか、アトリエ内で自由に使える工具を提供しています。

 

 

情報発信収集コーナー


山田毅さん(只本屋)が担当。亀岡のさまざまな情報とともに、全国で制作されている情報誌を提供し、情報の発信収集拠点となることを目指しています。

 

 

トークイベント・ワークショップ


中央のイベントスペースは、さまざまな形態のイベントに対応できるような空間デザイン。家具・什器類は中央の台形テーブルと椅子を除き、すべてオリジナルで設計したものです。

移動式の「配信屋台」も本学のチームが考案、設計したもの。上部の扉を開けると55インチモニターが内蔵され、下部にはWEB配信用の機材等を格納。アトリエ内の自由な場所に移動して(アトリエ外も可)、新たに整備された無線LANを活用し、いつでもどこでもオンライン配信が可能な屋台です。

 

 

展示・展覧会


亀岡市の魅力や取り組みを、さまざまな側面から紹介するコーナー。現在は、シアタープロダクツによる「パラシュート生地を活用したトートバック」を展示。亀岡市は2018年に自治体で初めて「プラごみゼロ」宣言を発表しています。

 

 

マルシェ


移動販売カー「KIRIマルシェ」やキッチンのついた新しい屋台「やおやおや」を使用したマルシェ。亀岡の有機野菜などを販売しています。

 

 

ATLR CAFE(アトリエ カフェ)

亀岡牛のハンバーグランチ(1,200円)


SDGS、プラスチックごみゼロ、フードロスの低減、地産地消、フェアトレードなど、環境に配慮した取り組みを行うカフェ。亀岡牛のハンバーグランチ(1,200円)。ほか、日替ランチ(680円)、うどんやそば(500円)、カレーライス(550円)など。


営業時間
食事:平日 11:00〜14:00(土日祝休)
喫茶:平日 10:00〜17:00(土日祝休)

 


「開かれたアトリエ」とは、実はまだ仮称なのだそう。しかし松井利夫先生は、完成してから名前をつけても良いのでは?と言います。

「名前は市民のみなさんと一緒につけていったら良いのではないかと思いますし、勝手に出てくるというか、ここで活動することによって出てくるのではないかと。
生まれてくる前に子どもに名前をつけても良いけれど、生まれた顔を見てからつけるということも大切だと思います。皆さんがこのアトリエの名付け親になっていただけませんか?」

まだ名前のない「開かれたアトリエ」。図書やくつろぎ、食事、コワーキング、ワークショップ、イベントなど多様な使われ方をする中で、新たな出会いが生まれ、イノベーションを創出することが狙いであるとすれば、この空間でどのようなアクティビティが生まれるか「デザインのその先」もさまざま。ひとつの答えはありません。そう考えると、いま名前をつけずとも、自然とふさわしい名前が浮かび上がってくるということでも良いのかもしれません。


本学としては、今後も「開かれたアトリエ」がイノベーションの場として機能し、亀岡市が魅力あるまちとなるよう、文化芸術の普及や活力ある個性豊かな地域社会の形成・発展を引き続き共同で進めてまいります。

亀岡市役所「開かれたアトリエ」

住所 京都府亀岡市安町野々神8 市役所地下1F
利用時間 9:00〜17:00
利用料金 無料

*平日・土日問わず利用可能(年末年始を除く)。
*飲食をしない方も利用可能。

 

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