REPORT2021.04.14

映像デザイン

未来に想いを馳せて。― 池田綾子さん「明日への手紙」ミュージックビデオ制作プロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

2014年に発表された、シンガーソングライター池田綾子さんによる楽曲『明日への手紙』。透明感溢れる歌声が魅力の手嶌葵さんへ楽曲提供され、有村架純さんと高良健吾さんが主演するフジテレビ系ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の主題歌となりました。辛い過去を背負いながらも明るく前向きに生きようとする主人公を中心としたラブストーリーと相まって、「この冬、もっとも切ない歌」として幅広い世代から支持を得て、話題となった作品です。

このたび、キャラクターデザイン学科の学生たちが、作詞・作曲を務めた池田綾子さん自らが歌う「明日への手紙」のMV(ミュージックビデオ)を制作。2021年4月10日(土)に京都文化博物館別館ホールで行われたコンサートにて、完成したMVが発表・上映されました。

会場となった京都文化博物館別館(重要文化財・旧日本銀行京都支店)
池田綾子さんコンサート「haruni」

 

 

ゼミ横断型のMV制作プロジェクト

著名なマンガやアニメの作品展、ゲーム開発会社などとコラボレーションする産学連携プロジェクト、そして学外コンペへの出品など、社会を意識し、企画力や技術を磨く機会の多いキャラクターデザイン学科ですが、MV制作は初となる試み。今回は、アニメやCG、グラフィック、音楽プロデュースなどのゼミ生16名が横断的に関わり、制作に取り組みました。

担当教員は、音楽プロデュースやメディア・プロモーションを専門とする小岩左忠教授。ユニバーサルミュージック合同会社の音楽プロデューサーやNPO法人映像産業振興機構(VIPO)事業プロデューサーとしてのキャリア経験を活かした、実践型の指導を行っています。

プロジェクトが始まったのは、昨年の5月のこと。大学はまだオンライン授業のため教室に集うことはできず、リモートでプロジェクトが進められました。

主人公の三面図など。
登場する時間が短いキャラクターも詳細な設定がなされている。
イメージボード。
ビデオコンテ。

 

人と人とのつながりの大切さ

プロジェクトのテーマは「つながり」。小岩左忠教授によると、コロナ禍という危機と混乱の時代を乗り越えるため、音や映像、言葉、楽しいことや大好きなことで “つながる” ことを大切にしながら、あえてさまざまなゼミが連携し、MV制作に横断的に取り組むことにしたと言います。

「私の音楽プロデュースゼミでは、"音楽によって何を作り、何ができるか” を考え、向かうべき方向性を追求し、音楽視点から音楽の未来と向き合うことを目的としています。前期は大学が閉ざされオンライン授業となる中で、アニメやCG、グラフィック、音楽プロデュースなどのゼミが関わることで、人と人とのつながりの大切さや素晴らしさを学んでもらいたかったという意図もあります。結果的に、アニメやCG、実写などのさまざまなアプローチを組み合わさることで、重層的な作品になったと思います」。

MV(ミュージックビデオ)の一場面。

 

『明日への手紙』は、まるで未来の自分から、悩み苦しみもがいている過去の自分に宛てた暖かい手紙のような曲。そして池田綾子さんの包みこむような優しさ溢れた歌声と切ないメロディーが心を揺り動かし、明日への勇気を与えてくれます。


明日を描こうともがきながら
今夢の中で
形ないものの輝きを
そっとそっと抱きしめて
進むの

「明日への手紙」歌詞より。


そんな楽曲の世界観や現在の社会状況を踏まえ、「過去・現在・未来」の時間軸を行き来しながら、これからの未来に希望を馳せて、優しく寄り添うような映像作品に仕上がりました。

監督を務めた大内健佑さん(アニメゼミ・4年生)は、「さまざまなゼミ生が関わって制作を進めていく点がとても難しかったのですが、制作していくなかでMV自体のテーマでもあった “人とのつながり” の大切さを身にしみて感じました。人や社会に発表して見ていただくという、クライアントのためのモノづくりは初めての経験だったので、喜んでいただけて本当に嬉しいです」と語りました。

 

池田綾子さんコンサート「haruni」でのMV上映

MVが披露されたのは、2021年4月10日(土)に行われた池田綾子さんのコンサート「haruni」にて。コロナ禍という困難な状況下ですが、春のひと時を心穏やかに過ごしていただけたら、という願いを込めて企画されたそうです。

会場となった京都文化博物館別館ホールは、明治時代に辰野金吾により設計された旧日本銀行京都支店で、国の重要文化財に指定されている建物です。そんな歴史を感じさせる空間に、池田綾子さんの優しく、透明感のある清々しい歌声が響き渡りました。

池田綾子さんの歌唱に合わせ、MV制作の過程の様子などが投影された。

 

コンサートでは、MVの上映や池田綾子さんによる『明日への手紙』の歌唱に続き、学生を代表して山本望冬さん(音楽ゼミ・4年生)がスピーチを行いました。そして、MVと併行して制作された「コンサートポスター」と「ミュージック・トレーディングカード」を贈呈。こちらのトレーディングカードは、裏面にQRコードが配され、MVが見られる仕様になっています。

学生たち9名が登壇。
制作した「コンサートポスター」や「ミュージック・トレーディングカード」が贈呈された。
「コンサートポスター」も学生によるデザイン。なんと次のコンサートでも使っていただけることに。
「ミュージック・トレーディングカード」は全4種類。
コンサートにお越しいただいた方々に配布された。
学生を代表して山本望冬さんがスピーチ。


「私たちが『明日への手紙』のミュージックビデオを作らせていただくことになったのは、世の中が今以上に緊迫した雰囲気に包まれ、大切な人と会うことすらままならなかった昨年の5月のことです。池田さんからあたたかいメッセージを受け取った私たちは、何度も会議を重ね、リモートでの作業という難しい状況の中で制作を進めていきました。

『明日への手紙』のテーマは、“過去・現在・未来・滲み・重なり合う”です。このテーマをもとに自由な『明日への手紙』の物語を紡ぎ、制作しました。私たちももがき苦しみながら、でも楽しく明日と繋がる作品作りの旅ができました。

私たちはこの『明日への手紙』ミュージックビデオを通して、あたたかい想いが少しずつ絡み合い、大切な人へ想いを馳せるきっかけになればいいなと制作させていただきました。どうかその願いが、皆様にも繋がっていけばいいなと思います。今回の貴重な経験を大切に、これからも学生一同前を向いて進んでいきます。

改めまして池田綾子さん、今回は『明日への手紙』という素晴らしい楽曲を提供していただき、本当にありがとうございました」。


「“過去・現在・未来、滲み、重なり合う” という『明日への手紙』のテーマを学生さんたちが自由に解釈し、新しい物語を紡いでいただきました。生まれた映像作品の中に、私も新しい扉を見つけられるような気がしています。大変な春の幕開けから始まったプロジェクトでしたが、心の中の大きな空間で、作品作りの旅を楽しんでいただけたら、幸いです。お一人お一人との出会いに、感謝を込めまして」。

シンガーソングライター・作詞家・作曲家 池田綾子

 

皆さんのコメントにも繰り返し出てきた「つながる」というキーワード。未曾有の危機の状況だからこそ、その悩みや苦しみを分かち合い、みながつながり、明日へつながる、希望に満ちたMVが制作できたのではないでしょうか。

 

 

池田綾子(シンガーソングライター・作詞・作曲家)

東京都出身。武蔵野音楽大学音楽学部声楽科卒業。
2002年から音楽活動を開始。日本語の「響き」を大切にした歌詞と旋律、クラシックの発声を基調とした独自の歌声を持つシンガーソングライター。
7枚のアルバムと11枚のシングルをリリース。NHK「みんなのうた」、NHKBS「にっぽん縦断こころ旅」のテーマソング、2014年 手嶌葵に楽曲提供したフジテレビドラマ主題歌「明日への手紙」は2016年国際ドラマフェスティバル in TOKYO 東京ドラマアウォードにて主題歌賞を受賞。2017年JR九州クルーズトレイン「ななつ星in九州」イメージソングやその後多数のアーティストに作品提供を行い現在に至る。
また、世界遺産・屋久島の音楽祭「やくしま森祭り」を立ち上げ15年目を迎えた。
https://www.ikedaayako.com/

(撮影:高橋保世、広報課)

 

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