COLUMN2016.11.09

京都

松茸と瓜生山の赤松林 ―瓜生山歳時記 #3

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 松茸は、松茸科の食用茸で赤松林に多く生える。「匂い松茸、味占地」といわれ、香高く風味が優れているのがいい。日本国内では生産量が少なくたいへん高価であるが、それでも売れる。
 赤松の樹齢が20年から30年になると松茸の発生が始まり、樹齢30年から40年が活発で、70年から80年で衰退するそうである。松の根と共生するので、松茸の子実体は典型的には直径数メートルの環状に発生する。見つけたら松の根から同じ距離でたどるとまた見つかることがある。
 鋤焼きがとくに美味しい。兵庫県の氷上で松茸山に案内されたとき山を下りると、友人が河原で鋤焼きの用意をして待っていた。美味しくするコツは、肉が隠れるほど松茸を割いて載せることと教えてくれた。確かに美味しかったが再現する機会は2度とないだろうと思う。
 薄切りにして醬油と酒と味醂で炊き込んだ松茸飯も香りと歯触りを愉しむ秋の季語である。

松茸の椀のつつつと動きけり      鈴木鷹夫

 瓜生山学園のある瓜生山には赤松が450本あるという。庭園の研究者が大学にいるので調査ができている。しかし、松茸があるかどうかは確認できていない。ある人の話によると、松茸を持って山を下りてくる人を見かけたというが定かでない。吉田松陰の像のあたりから千秋堂の上あたりを探してみたいと思っているが、1人では心細いので、同行してくれる人を探すことにしたい。
 瓜生山学園創立40周年にあたって、松茸を探す企画もあっていいかもしれない。

献立に松茸飯の太字かな        和夫

 

<文:尾池和夫、写真:高橋保世>

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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