INTERVIEW2019.06.17

映像

『オーファンズ・ブルース』の原点―工藤梨穂監督インタビュー

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  • 京都芸術大学 広報課

京都造形芸術大学映画学科の2017年度卒業生・工藤梨穂監督の映画『オーファンズ・ブルース』がテアトル新宿を経て、6月15日(土)からは京都シネマでの上映がはじまりました。 卒業制作として撮られた本作は、第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のグランプリをはじめ数々の映画祭での受賞・上映が続いています。
映画監督としてのキャリアの原点である映画学科についてやそこで生まれた本作について、工藤さんに話を聞きました。

『オーファンズ・ブルース』は、記憶が欠落する病を抱えるエマが行方不明になった幼なじみのヤンを探して旅に出る物語。色合いや「熱」感が「日本映画であまり見られない」と評されたとおり、汗のにじみやまとわりつくような暑さがスクリーンのこちら側にも伝わってくるほど。「観た人をどこかに連れていきたい」と思って作ったと話すように、日常からはどこか遠く感じる風景が捉えられています。

先生方からの指導について、担当教員の鈴木歓先生からは脚本を改稿するたびに「もっと訳分かんなくしていいんだよ」「訳分かんないけど面白いって思うものを目指そう」という助言があったといいます。「自由にさせてくれるけど、それでいてじっくりと向き合ってくれました」。北小路隆志先生とは、登場人物の名前「ヤン」をめぐって最後まで意見が分かれるも自身の案を貫いたそう。「批評家の視点から、『このシーンはいらない』など明確にアドバイスいただきました」。

在学生の制作スタッフの力添えは欠かせなかったと話し、「最後のロケ地選定では制作部と最後の最後まで悩みました。衣装の子とは『この人物は青の服を着たほうがいい』と意見を出し合ったり、照明部と一緒に照明テストをしたり…。みんなとめちゃくちゃ相談しました」。1年生のときから監督志望だったものの、先輩の自主制作などで制作部、助監督、録音部なども経験。「撮影の外側を経験していないと、制作部の苦労はわからなかったと思う。監督以外の仕事もやってよかったです」。映画監督を目指す身にとっては、演技をやりたい学生がすぐ近くにいて常に一緒にいられるという環境も大きかったといいます。

2018年12月のぴあフィルムフェスティバル in 京都にて。上映後、北小路先生と制作期間を振り返る

PFFの他、なら国際映画祭2018学生映画部門「NARA-wave」では最高賞にあたるゴールデンKOJIKA賞と観客賞をダブル受賞など、ファンを増やし続けている本作。PFFでは俳優の生田斗真さんら映画業界の第一線で活躍する審査員から評価頂き、中でも冨永昌敬監督からの「音が良い」「あえて童顔の役者を集めているね」という言葉が印象に残っているそう。「音や光、キャスティングなど、こだわった部分を理解してくださる人がいるのはうれしかったです」。映画を作るときは撮りたいイメージに合う曲を見つけることから始めるという工藤さん。登場人物に寄り添う音楽にも注目です。

テアトル新宿京都シネマ以外ではアップリンク吉祥寺で6月21日(金)から、シアターセブン(大阪)で7月13日(土)から公開が決定。さらに海外でも、スペインの映画祭「FILMADRID」に続いて7月19日(金)からニューヨークで開催される映画祭「ジャパン・カッツ2019」での上映も決まりました。詳細は映画学科ブログよりご覧ください。

京都造形芸術大学映画学科の卒業制作では初となる一般劇場での公開。卒業生の活躍をぜひ劇場で目の当たりにしてください。

オーファンズ・ブルース

忘却の予感と共に、旅路をゆく女。

誰かをひたむきに思い続ける彼らの姿を映し出した”希望”のロードムービー

出演 村上由規乃、上川拓郎、辻凪子、佐々木詩音、窪瀬環、吉井優
監督 工藤梨穂
上映時間 89分
配給・宣伝 アルミード

http://orphansblues.com/

 

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