COLUMN2019.05.27

新緑と新樹の東山を歩くー瓜生山歳時記#33

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  • 尾池和夫
  • 高橋 保世

 新緑、緑さす、緑夜という季語が5月にふさわしい。初夏の若葉のあざやかな緑のことである。新樹という季語もある。みずみずしい若葉におおわれた初夏の樹木のことを指している。入学式を彩った桜もすっかり葉桜になり、東山三十六峯は新緑に覆われる。

 東山三十六峯は諸説あるが、ここでは比叡山を北の端、稲荷山を南の端としたおよそ三十六の峯々からなる東山山系ということにしておく。江戸時代末期の「花洛名勝圖會」では、どの山を数えているかはわからないが、東山三十六峰の言葉が明記されてる。

 

夜の新樹詩の行間をゆくごとし  鷹羽狩行

 

 東山は花折断層、鹿ヶ谷断層、桃山断層などの活動によって隆起している。おもには堆積岩からなるが、火成活動で比叡山と大文字山の間に花崗岩が貫入して焼いたため、そこだけ硬いホルンフェルスができた。比叡山と大文字山は浸食されずに高いままで、その間の花崗岩の浸食が進んで鞍部となり、北白川扇状地を形成した。そこに近江へ越える峠道ができた。

 東山の麓や山上には多くの神社、寺院があり、中には伏見稲荷大社、清水寺のように平安京よりも古い歴史をもつ社寺もある。

 瓜生山学園は三十六峯の中の瓜生山の斜面に位置し、そこに1歳から96歳の生涯学習に対応する学園がある。また、花山山、あるいは華頂山、清水山の名のある山には、太陽と太陽系の惑星を観測する京都大学理学研究科の花山天文台があり、京都造形芸術大学の学生や教職員もよく出入りして連携している。地元では花山を「かさん」と呼び、天文台の英語名もKwasanである。

 歴史ある天文台を市民にも大いに利用してもらえるようにと、花山天文台を支援する組織を作って、私が理事長を務めている。花山天文台の国からの予算は切られてしまったが、高松市のクレーン会社である株式会社タダノ(代表取締役多田野宏一氏)が、10年間で1億円を寄付してくれることになって、やっと存続できることになった。世界的に活躍する建設機械メーカーである。

 

巨大クレーン雲吊り上げて冬の月   和夫

 

◎瓜生山キャンパスの新緑・新樹

青もみじ
瓜生山からみた大文字

瓜生山から望む京都市内

新緑の松

 

◎花山天文台(京都大学大学院理学研究科附属天文台)

花山天文台は1929年に設立。観測4の主力が飛騨天文台(同大大学院附属天文台)に移った今もなお、研究・教育活動はもちろんのこと、アウトリーチ活動の拠点として活用されている。本学の授業でも見学に訪れることがある。
国内の屈折望遠鏡としては3番目に大きい口径をもつ45㎝屈折望遠鏡。一般公開されている屈折望遠鏡では最大級のもの。
1910年に購入された口径18㎝屈折望遠鏡。現役で活躍しているものでは日本最古の望遠鏡。
館内には多数の資料が準備されている。毎年たくさんの小・中・高校生が学習に訪れる。
同施設内の歴史館には、約90年前に使用されていた正確な時刻を計測する精密時計(左)や子午儀(中央)など貴重な資料が展示されている。
同施設内の太陽館に設置されている70㎝シーロスタット望遠鏡。同館は建物全体で「太陽分光望遠鏡」として機能し、太陽のスペクトルを取得できる。本学の人間館4階には、尾池学長が設置した太陽のスペクトル資料が掲示されている。
京都造形芸術大学とも深い関わりのある同施設には、本学卒業生 桑原ひな乃さん(美術工芸学科2018年度卒)の作品「投句箱」が設置されている。これはシーロスタット望遠鏡をモチーフに制作された。同施設を訪れた際にはぜひ投句してみてほしい。

京都大学大学院理学研究科附属天文台ホームページ:https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/

【文:尾池和夫、写真:高橋保世】

  • 尾池和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都造形芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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