REPORT2018.12.12

アート

芸術によるモノづくりイノベーション- “モノづくりの可能性を広げる” MONOVATE IN 京都

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  • 京都芸術大学 広報課

京都造形芸術大学の学内共通工房ウルトラファクトリーでは、10月20日(土)に「MONOVATE IN 京都」が開催されました。

「MONOVATE」とは「モノづくり+イノベート=モノづくりの革新」を意味し、革新的・独創的なモノづくりのアイデアや技術をプレゼンするイベントのこと。プレゼン後は会場全体でディスカッションが行われ、課題解決方法や今後のモノづくりのビジョンについてさまざまな意見が飛び交います。さらに、聴講者からプレゼンターへ資本・業務提携が提案されるなど、新たなビジネスが生まれる場となる画期的なイベントです。

今回の「MONOVATE IN 京都」は、本学とのコラボレーションということもあり「芸術によるモノづくりイノベーションとは」が共通のテーマ。全6組のプレゼンターの中から、本学の「伝統文化イノベーション研究センター(KYOTO T5)」による「Old is New 伝統に新しい可能性を生み出す」をご紹介します。

プレゼンには、本学の竹之内春花さん(空間演出デザイン学科2年生)、岸直輝さん(同学科2年生)、﨑山紗己さん(美術工芸学科1年生)と本学卒業生の坂室優子さん(空間演出デザイン学科2017年度卒業)の4名が参加。伝統に新しい可能性を見出すための取り組みと、今後の目標について発表しました。

伝統文化イノベーション研究センター(KYOTO T5)とは?

手前から﨑山紗己さん(美術工芸学科1年生)、岸直輝さん(空間演出デザイン学科2年生)、竹之内春花さん(同学科2年生)

本学の「KYOTO T5」は、空間演出デザイン学科の酒井洋輔准教授がディレクションをしているファッションブランド「Whole Love Kyoto」と連携し、京都の伝統文化をアーカイブしたり、イノベーティブな製品を企画・販売することで、伝統文化に関わる人が増えることを目指した取り組みをしています。

「Whole Love Kyoto」は「京都にずっとあるのに皆が見過ごしているものごと」に光を当て、その魅力に気づくしかけを行うブランドとして、伝統工芸の優れた道具や素材、技術をもとにアイデアをファッションに落とし込み、製品として販売しています。日常的に使用してもらうことによって、伝統文化が産業として維持できる状態を目指します。

今回プレゼンターを務めた学生たちは、Whole Love KyotoとKYOTO T5の活動に参加し、「京都が持つ面白さをもっと伝えたい!」という強い想いを持って活動に取り組んでくれています。

伝統工芸の「今」

伝統工芸は、お客さまに合わせて時代の変化に対応し、ひとつひとつ丁寧に作られている、いわば「日本のモノづくりの原点」であり、その技術は特異性と有為性に満ち溢れています。
そして、京都には数多くの伝統工芸があり、後世に伝えていこうとする職人さんが存在しています。
それにも関わらず、我々は伝統工芸について一体どれくらいのことを知っているのでしょうか。

日本の伝統工芸産業の現状は、20年間で従事者数は3分の1、生産高は5分の1にまで落ち込んでいます(経済産業省より)。
一般的に見ると“衰退している”と言われている伝統工芸ですが、“衰退していることが問題”という認識ではなく、“衰退していることがなぜ問題なのか”について考えることが重要であると捉えています。
伝統工芸がどれだけ日本のモノづくりを支えているのか、データや数字等を根拠とした明確な理由を見つけていくことが大切なことである、と語ってくれました。

数値上での現状分析もしっかりと行いながら、伝統工芸品産業の実態を調べていきます

近年、訪日外国人観光客の数は増加の一途を辿っていますが、その3人に1人がファッション関連の買い物をしているという調査結果が出ています(国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査2010-2017」より)。
その反面、着物等の和服や伝統工芸品に費やす金額は非常に低いのが現状です。

多くの外国人が日本や京都という土地に魅力を感じ、文化に興味を持ってもらっていることで訪日数が増えている一方、「伝統工芸は日本の財産である」と魅力を感じてもらえるようになるためには、評価されるための指標が必要であると考え、自分たちの取り組みに活かしています。

Old is New―伝統に新しい可能性を

Whole Love KyotoとKYOTO T5では、製品を生み出す上で職人さんと多くのコミュニケーションをとることを大切にしています。その技術や道具についてのリサーチの成果や職人さんのインタビューを、アーカイブ資料として一般的に広くアクセスできるようWEB上で公開しています。
それは、多くの方が伝統文化の魅力に触れ、何かを誘発できるきっかけになってくれればと考えているからです。

職人さんが使用する道具や作業風景を細かくリサーチしている様子も紹介

Whole love Kyotoは、ファッションを伝統文化に落とし込むことで、伝統文化の技術を今まで以上に魅力をアピールできる可能性がある産業であると考え、この先も京都が守ってきたものを大切にしながらも、その技術を元に新しい価値を生み出す存在でありたいと考えています。
鼻緒をスニーカーに挿げたHANAO SHOESや、提灯をキャップに仕立てたCHOCHIN CAPなど、ここから生み出される製品は伝統文化の技術や素材を活かしたMade in Kyotoのものばかりです。

“鼻緒”をスニーカーに挿げたHANAO SHOES  (写真:CHIMASKI)
京提灯の老舗問屋・美濃利の職人と共同制作したCHOCHIN CAP(写真:CHIMASKI)

プレゼンテーション後、パネラーの方々からは、コラボレーションして何か事業を進めていきたいという声をたくさんいただき、まさしく伝統の新たな可能性が広がった瞬間でもありました。
同時に、より科学的な分析をふまえた研究内容や根拠資料が必要であるという課題も見つかりました。
今後、活動を進めていく中で、科学的なリサーチという側面からのアプローチにも注力していきたいと再認識できる場となり、MONOVATE IN KYOTOは盛況のうちに幕を閉じました。


今回プレゼンに参加してくれた竹之内さん(空間演出デザイン学科2年生)は、「Whole Love KyotoとKYOTO T5での活動を進める中で、日本人でよかったと改めて感じています。日本はとてもクールな国です。うわべのことだけでなく、これからも“京都のほんまもん”を伝えていきたい。そしてみんなが京都のことを知って、好きになってもらえたら嬉しいです」と話してくれました。

プレゼンターを務めた 空間演出デザイン学科 竹之内春花さん

▼MONOVATEプレゼンター
 ・朝戸一聖(タンサン株式会社 代表取締役)
 ・山口典子(アーティスト、株式会社デジタルアルティザン)
 ・福冨善大(株式会社善大工業 代表取締役)
 ・三浦耀山(仏師)
 ・船津さくら(尾道市立大学 学生)
 ・KYOTO T5(京都造形芸術大学 学生 竹之内春花、岸直輝、﨑山紗己)

▼ゲストパネラー
 ・小笠原治(株式会社ABBALab 代表取締役、京都造形芸術大学教授)
 ・中尾浩治((一社)日本医療機器産業連合会会長 元テルモ株式会社 会長)
 ・原雄司 (株式会社デジタルアルティザンCEO、株式会社デジネルCEO)
 ・ヤノベケンジ(現代美術家、京都造形芸術大学教授)
 ・戸田拓夫(株式会社キャステム 代表取締役、折り紙ヒコーキ協会会長)

 

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