COLUMN2018.11.26

お坊さんと学生とで作る十夜祭 ―瓜生山歳時記#27

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

十夜は初冬の季語。お十夜、十夜法要、十夜粥、十夜婆、十夜鉦、十夜寺、十夜
僧、十夜柿というように多くの傍題を伴う。十夜婆(ばば)というのは、この法要を
行っている婆である。十夜粥は夜中に振る舞われる。


 旧暦10月6日から15日まで、10昼夜にわたって行われる念仏法要で、十夜会(じゅう
やえ)、あるいは御十夜(おじゅうや)と言われる。日本大百科全書によると、「善を
修すること十日十夜なれば、他方諸仏国土において善をなすこと千歳ならんに勝る」
「十日十夜散乱を除捨し、精勤(しょうごん)して念仏三昧(さんまい)を修習」などと
経典にあるという。法要の形をとったのは室町末期の永享年中(1429~41)のことで
ある。平貞国が京都黒谷の真如堂に三日三夜、念仏参籠した暁、夢想を得て引き続き
七日七夜の念仏を行ったことに由来する。

 

運び来る僧皆若し十夜粥     原 石鼎

 

瓜生山学園では、浄土宗の伝統行事である十夜法要を、学生たちとお寺との連携で
実行しようという興味深い企画が続いている。地域のお寺に継承されている仏教文化
を、学生たちが現代の感性で解釈し、アートで表現するという趣旨である。この企
画、お寺の持っている魅力がどれだけ引き出されるであろうか。あるいは学生たちが
この企画を通してどれだけ浄土宗の伝統に入り込んでいくことができるであろうか。
いろいろの視点からとても興味深い。


 京都盆地に脈々と受け継がれ、人々のこころを引きつけてきた仏教文化の魅力が、
すなわち京都にあるお寺ごとの魅力である。今年の十夜祭は、学生クリエイターとお
坊さんが作る10日間のアートフェスだ。六道輪廻をコンセプトとして、ファッション
ショー、浄土系アイドルによるライブ、住職の複製ロボットによるテクノロジーと仏
教の未来の予感。これらをさまざまなパフォーマンスで人々に問う。2018年、四年目
を迎えるこの十夜祭が、新たなテーマ、新たなクリエイターと共に、仏教の世界観に
触れる地域の子どもたち、大人たちにどれだけ楽しんでもらえるだろうか。

 

金髪の碗を吹き吹き十夜粥     和夫

 

 

◎十夜祭(JU YA FES)

【宝蔵寺(京都市中京区)】-「NAMUAMIDANCE(音楽パフォーマンス)」

11/17(土)~18(日)実施

撮影:志村茉那美(美術工芸学科4年生)

終電を逃したとき・何かから逃避したいときにも訪れるクラブは、現代の「駆け込み寺」のような存在で極楽浄土とも重なる要素があるというところに着想を得た企画が「NAMUAMIDANCE」。
「NAMUAMIDANCE」では、しっとりとしたエレクトロニック音楽と映像がつくり出すゆったりとした空間で体を静かに揺らしながら、仏教の世界観に親しむことができる。

 

【知恩寺(京都市左京区)】-「六道輪廻からの脱出(脱出ゲーム)」、「蓮の息吹(インスタレーション)」

11/24(土)~25(日)実施

撮影:高橋保世

インスタレーション作品「蓮の息吹」…仏教において極楽浄土に咲く花で悟りを表すといわれている蓮華。その種はすべての生きとし生けるものが持つとされ、仏性と呼ばれる。自分という存在を見失いそうになる情報過多の現代において、お寺は自身の仏性を見つめられる大切な場であることを、インスタレーション作品をとおして象徴的に表現している。
「六道輪廻からの脱出」。ゲームの謎解きをとおして、仏教の世界感にひたることのできる企画。「餓鬼道」の飢えと渇きの世界を表現している。
寒さに負けずイベントを運営する学生たち。本イベントには京都造形芸術大学の学生だけでなく、関西圏の大学生も多数参加している。

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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