COLUMN2016.09.14

京都

二百十日と防災訓練 ―瓜生山歳時記 #1

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 二百十日は雑節の一つで、二十四節気の第1である立春の日から210日目、2016年の場合は8月31日(水)であった。年によって変動し、9月1日か8月31日が多い。この時期、稲が開花し、結実する時で、台風が襲来して農作物に被害があり、立春から220日目の二百二十日とともに厄日と言われる。農作物を守るため各地で風鎮めの儀式や風祭りが行われる。海でも、二百十日は伊勢の船乗りたちの経験で凶日とされてきた。八十八夜などとともに雑節として暦に記載されたのは江戸時代である。


火の国の厄日過ぎたる陸稲(をかぼ)の香  大島民郎

 

 一方、9月1日は1923年9月1日に発生した関東大震災の記念日であり、二百十日と併せて災害についての認識と心構えを喚起する日として、1960年、防災の日に制定され、この日を含む防災週間も設定されており、防災訓練が各地で行われる。
 瓜生山学園でも、2016年8月26日(金)10時から、左京消防署の指導を受けつつ防災訓練を実施した。出火の連絡が本部に届いたが、消火栓の前に物があって初期消火に失敗という連絡があり避難することにした。消火器の扱い方を実習した後、専門家の厳しい指摘を受けた。それを真摯に受け止め、ただちにさまざまの改善が行われた。
 旅先では非常口や消火器の位置を確認したりするが勤務先のことは意外に知らない。訓練をきっかけに消火栓などに目が向くようになる。ビーナス像の横に消火栓と消火器があり、いかにも芸術大学らしいという発見もあった。訓練を繰り返し、防災用品を備え、学生たちの安全を最優先にして、学園の努力が続けられている。

 

微睡みて二百二十日の昼を過ぐ    和夫

 

<文:尾池和夫、写真:高橋保世>

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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