COLUMN2018.07.25

京都文芸

祇園会のごみ減量作戦-瓜生山歳時記 #23

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 祇園御霊会の起源は貞観11年である。国の数66本の鉾を立て、6月14日に御霊会を
修した。これが今の還幸祭の起源である。神幸祭と還幸祭の神輿渡御が祇園祭の山場
となる。祇園御霊会の初見は『祇園本縁雑実記』に「貞観十一年天下大疫の時、寶祚
隆栄、人民安全、疫病消除鎮護の為、卜部日良磨、勅を奉じて六月七日、六十六本の
矛、長二丈許りを建て、同十四日、率洛中の男児及び郊外百姓を率いて、神輿を神泉
苑に送り、以て祭る、是れ祇園御霊会を号す、爾来毎歳六月七日十四日、恒例と為
す」とあり、『三代実録』(巻七清和天皇貞観五年五月二十日条)に、「廿日壬午。
神泉苑に於いて御霊会を修す」とある。
 同じ年の直前に、東北地方に巨大地震があり、大津波による災害があった。祇園祭
と貞観の大津波との時間的な関係から、私は両者に深い関連があったという考察をし
たことがある。当時、京、多賀城、大宰府だけが大都市であった。多賀城の被害は京に
緊密な関係があり、早馬で災害を知った朝廷は御霊会の勅令を発することになったと
考えた。

 

祇園会の水美しく鯉を飼ふ  茨木和生

 

 今、祇園祭は暑い最中の宵山に人が集まる。京都市では2018年度も「祇園祭ごみゼ
ロ大作戦」を実施している。京都の大学生たちも多数、ボランティアで参加してい
る。また、さまざまな展覧会などが鉾の街で展開される。2018年には、第7回祇園祭
によせて、扇子展が「Art Space-MEISEI」で、第10回祇園祭展が「染・清流館」で、
祇園祭扇子・うちわ展が、四条室町角鶏鉾町の「ちいさいおうち」で、などなど。美
術工芸学科や空間演出デザイン学科の学生たちが、京都マルイ店頭で展示販売会を行
い、風呂敷で知られる宮井株式会社の活動に参加する学生もいる。宮井株式会社のあ
る鯉山町では、左甚五郎作の大きな鯉の彫刻が展示される。
 祇園祭に直接の関係はないが、本学から最近巨大なゴミが搬出され、東京の大井町
にできている劇団四季の新しい東京キャッツシアターに届けられた。この劇団四季
キャッツプロジェクトの写真は本学のウェブサイトに出ている。学生たちの力作のゴ
ミは、今、東京で保管されており、8月上旬には学生たちが東京へ出かけて劇場に運
び込む作業を行う。

 

鉾粽売る子左手に握り飯   和夫

 

宮井株式会社では学生がデザインを手掛ける風呂敷が商品化されている
風呂敷・袱紗の歴史を伝える宮井株式会社のギャラリー。日本の伝統的な作法を学ぶことができる
京都マルイにて行われた展示販売会の様子。学生が手掛けた貫頭衣・手ぬぐいなど約2,000点が販売された
6月29日~7月24日に染・清流館で開催された第10回「祇園祭展」。(作品)本学通信教育部 兼先恵子先生:「担い手」

 

劇団四季 産学連携「キャッツ」プロジェクト(瓜生通信Webマガジン)

 

[文:尾池和夫・写真:高橋保世]

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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