REVIEW2018.06.28

アート教育

【学生レビュー】美術工芸学科2年 林美月―「Ordinary Children of the 20th Century」展

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  • 京都芸術大学 広報課

6月6日(水)から17日(日)まで、ギャルリ・オーブで開催された「Ordinary Children of the 20th Century」展。学生の目にはどう映ったのか、美術工芸学科2年生の林美月さんによるレビューをお届けします。

 

最近のギャルリ・オーブの展示傾向は投げかける層がわかりやすく、そのために観客を効果的に呼び込めているように感じられる

2017年の「テニスの王子様」展や2018年の「君に届け」展など、オープンキャンパスに来る高校生や原作のファンを外部から呼ぶ展示は、この大学を知ってもらうきっかけとしてはいいやり方だろう。
在学生にも、そういった作品に触れてきたという人が多くいると思う。むしろ今美大・芸大進学を考えている人の中で、「昔ピカソの絵を見て感動して画家になろうと思ったんです」と思っている人の方が少数派ではないだろうか。

これまでは、この大学を知ってもらうために外へ向けて比較的ポピュラーな展示をしていた印象があったが、本展「Ordinary Children of the 20th Century」は学生とアーティストを目指す人たち、現在アートの仕事をしている人たちへと向けられているという点が大きな特色だろう。

池田光弘先生

 

大庭大介先生
勝又公仁彦先生
河野愛先生
鬼頭健吾先生

新鋭教員選抜展ということで学部生と大学院生を担当する学科を横断した教員の展示で、学部生時代の作品と現在作家として発表している作品が同じ空間にあるというのが見どころだ。

頻繁に美術館に足を運ぶというタイプではない学生にとっても、美術館で飾られるほどの強度のある作品が無料で観られるという、贅沢な機会となった。
また学部生の頃の作品も置くことで、学生にとって自分たちと作家との距離が少し緩和されることを試み、そしてそれに成功していた。
「〇〇先生はこんな作品作っていたんだ!」を入り口として興味を持ち、そこから作品を分析し、年代、思考、戦略…作家たちが目指している場所を考えるきっかけになったかもしれない。

会期中に開かれたトークショーで出展教員たちの話を聞いたところ、学生時代意欲的ではあったが成績は良くなかったという先生が多かった。
中には週6でクラブに行ったり、先生から講評を受けたことがほぼなかったり、アーティストになるという意識が高く自主制作が中心だったため、先生からあまり注目されなかったりという話も出た。今の京都造形芸術大学は昔とまったく違うから戸惑うと笑う教員も。
今では立派な作品を作り、自分の制作で食べていくことができている先生たちだから、そのギャップが興味深かった。
本人の努力次第でいくらでも高みへと上っていけるということを証明するような展示だった。

小金沢建人先生
高橋耕平先生
彦坂敏昭先生
見増勇介先生
八木良太先生

今の京都造形芸術大学に疑問を持っている学生が、それを大学関係者のSNSを通じて投げかけていたのを見かけたことがある。
今の大学は素晴らしいと声高らかに掲げられてはいるが、拾いきれない、届ききれない学生がいるのは今も昔も変わらないようだ。

(実は筆者も、本展と同じ期間、同じ会場で予定していたグループ展が急きょ延期となったため、とても驚いた)

筆者が通う美術工芸学科の制作拠点となっている校舎に行く際に、出展作家の一人である山本太郎先生の作品で、当時の理事長を描いた屏風が視界の端に写っていた。

 

文:林 美月(美術工芸学科油画コース2年生)

撮影:表 恒匡

 

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