REPORT2017.07.20

アート

「第21回シドニー・ビエンナーレ」 企画発表会リポート

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  • 京都芸術大学 広報課

7月19日、東京は港区三田のオーストラリア大使館で、来年2018年に開催される「第21回シドニー・ビエンナーレ」の企画発表会が開催されました。
シドニー・ビエンナーレは、1973年にスタートしたアジア太平洋地区で最も歴史のある国際展ですが、来年開催の第21回は、森美術館のチーフキュレーターで京都造形芸術大学の片岡真実教授が、アジア人初の芸術監督を務めるということで注目されています。
およそ40名もの報道関係者が集まった企画発表会の会場では、シドニー・ビエンナーレのディレクター兼 CEOのジョー・アン・バーニー・ダンツカーさん、オーストラリア大使館の広報・文化担当参事官のマイケル・ホイさんからのご挨拶の後、片岡真実芸術監督から企画説明が行われました。
今回発表された第21回シドニー・ビエンナーレのタイトルは「スーパーポジション:均衡とエンゲージメント(SUPERPOSITION: Art of Equilibrium and Engagement)」。
量子力学用語から「SUPERPOSITION(重なり合い)」という言葉を引きつつ、古代中国の自然思想である陰陽五行の五行説の考えを借り受け、「多様な価値観が同時に存在し、それぞれが関係を持ちながら均衡を保つというような状態をイメージし、それとともにそれぞれと深く関わっていくという意味でエンゲージメントが大切と考えています。シドニーを『世界を映す鏡』というように考え、そこから広がる様々な歴史について考えていきたい。」と片岡芸術監督は語ります。
また、最終的に参加アーティストは75〜76名になる予定だそうですが、本日は、4月に発表された21名に加え、16名の参加アーティストが発表になりました。
その16名のひとりに、京都造形芸術大学の卒業生の井上亜美さん(こども芸術学科 2013年度卒業)が選ばれました。

 (左から)シドニー・ビエンナーレディレクター兼 CEOジョー・アン・バーニー・ダンツカーさん、片岡真実芸術監督、井上亜美さん 撮影:高橋保世(美術工芸学科4年)

井上亜美さんは、京都造形芸術大学 ULTRA FACTORYが主催するアートコンペティション「ULTRA AWARD2016」で、最優秀賞を受賞した期待の新人アーティスト。2011年の東日本大震災で狩猟を続けることができなくなった猟師の祖父の影響から、自ら狩猟の免許を取り、映像やインスタレーションの作品を展開しています。

恐らく最年少アーティストとなるであろう彼女から生まれる作品が楽しみです。

「ULTRA AWARD 2016」最優秀賞受賞作品《イノブタ・イーハトーヴ》(2016) 撮影:守屋友樹

さて、本日の企画発表会の最後にジョー・アン・バーニー・ダンツカーさんの締め括る言葉がとても印象的でした。
「私が片岡真実さんのキュレーションの中の重要な点として捉えているのは、「私たちの中にある違いに対し、深い敬意を表する」ということです。紛争や戦争、イデオロギーの違いなど、現代社会が抱える問題に対し、「スーパーポジション:均衡とエンゲージメント」では、参加するアーティストの方々の作品を通じて別の方向性へ向けた有益な提案がきっとなされることと思います。」
芸術を通じた平和の探求を掲げる京都造形芸術大学にとっても、注目すべき重要な国際展になるのではと、とても感じ入りました。
なお、今後の予定ですが、残りの参加アーティストが2017年10月に発表され、第21回シドニー・ビエンナーレの会期は、2018年3月16日より6月11日まで。

詳細は公式ホームページでご確認ください。
https://www.biennaleofsydney.com.au


〔左から〕参加アーティストの高山明さん、柳幸典さん、ジョー・アン・バーニー・ダンツカーさん、片岡真実芸術監督、リチャード・コート駐日オーストラリア大使ご夫妻、参加アーティストの野口里佳さん、井上亜美さん、Jun Yangさん 撮影:高橋保世(美術工芸学科4年)


井上亜美|Inoue Ami
1991年宮城県生まれ。2014年京都造形芸術大学こども芸術学科卒業。2016年東京藝術大学大学院映像研究科修士課程修了。在学中に狩猟をはじめる。現場でつぎつぎに起こる出来事をエスノグラフィックな視点で見つめ、自身が出演・演出・記録する手法で映像作品を制作している。主な展覧会に「猟師の生活」(トーキョーワンダーサイト本郷、2017)など。2016年「ULTRA AWARD 2016」最優秀賞受賞。現在、第5期HAPSスタジオ使用者として京都在住。 

撮影:高橋保世(美術工芸学科4年)

 

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