SPECIAL TOPIC2024.03.05

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多彩な才能が輝く ― 2023年度 京都芸術大学卒業展・大学院修了展 学長賞・大学院賞

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  • 京都芸術大学 広報課
  • 高橋 保世

卒業展・大学院修了展では、各学科ごとに最も優秀な作品を「学長賞」「大学院賞」として授与しています。それでは、学科ごとに2023年度の受賞作品をご紹介いたします。

美術工芸学科:尾崎いろは『MEDIUM #1』

尾崎はこれまでに、物質や生命の生成と消滅、循環と断絶を様々なメディアを通し表現してきた。今回の作品MEDIUM #1は尾崎の身近に起こった死を、宇宙における円環構造の中に捉え直す壮大かつ繊細な試みである。大小のミニマルなグレーペインティングと回文を記した中央のリングが生み出す空間は真空のエネルギーの存在を予感させる。(池田光弘 准教授)

マンガ学科:岡本朝花『。/?(まるのはて)│ 心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される』

本作は「○/?(まるのはて)」という一見するとわかりにくい表題が与えられている。そこには、自己完結は何も生まず、疑問からこそ発展が始まるという、作者が4年間の取り組みを通じて得た力強いメッセージが込められている。プロの作家として連載を行いながら、本作における描線・セリフ・コマ割り・演出・テクスチャ・装丁・タイポグラフィ・展示に至るまで、作者と読者間の膨大なインターフェイスを粘り強く制御したその姿勢は最優秀に相応しい。(井本圭祐 専任講師)

キャラクターデザイン学科:玉腰由実『じゃあ君の思想が死ねばいい』

俵屋宗達の描く風神雷神は見つめ合っていない。雷神は雷を落とす下を見つめ、風神は前をまっすぐ見据えている。今年の風神は寡黙で冷静に黙々と作り続けた。決して平坦ではなかったはずだが、それを成し遂げたのは自分に対するストイックさと作品を愛する想いに他ならない。オマージュであり挑戦であり、集大成としての作品は揺るぎない強さを持っている。
風神は次に何を見つめるのか。社会の中で嵐を起こすのを楽しみにしている。(野村誠司 教授)

情報デザイン学科:岡本志音『Ten Type』

文字が持つ表情は、ビジュアルコミュニケーションの重要なファクタである。入学時より書体に興味を持ちグラフィック表現を学んだ成果として、触覚情報による文字設計に辿り着いたことは非常に興味深い。ありそうでなかった「点字」の書体展開は多様性を唱える現代に重要な発見だ。制作プロセスでフィールドワークを取り入れ実験・検証を行ったことも研究として評価できる。まさしく学びの集大成「卒業制作」に相応しい作品である。(藤原裕三 教授)

情報デザイン学科 クロステックデザインコース:山田桃愛『整形級に変わる二重アイローラーの製造販売』

企業が新規事業を立ち上げることを想像してみて欲しい。まっさらからテーマを定め、マーケティング全般を構築し、販売し利益を確保していく。その実現過程には、調整や交渉も必要で、理想通りに進まないことも少なくない。もちろん拙い部分もあったが、そのタフな工程を一人で遂行し、実現したのが本作品である。彼女は卒業後、美容業界に進む。自分の目標にブレなかったことが、これを成し遂げた要因の1つであったことを付け加えておく。(夏目則子 教授)

プロダクトデザイン学科:宇野淑乃『どの世代のユーザーであっても面白みと新規性を感じる、暮らしの道具の新しいインターフェース研究』

 

本研究はタッチパネルやアイトラッキング等のデジタル技術で進化するインターフェースに対するアンチテーゼである。便利さと反比例するデバイドの拡大に対して問いを立て、老若男女が一目見ただけで操作できるメタファーを古典玩具に求めることで解とした。可動モデルによる試行錯誤を繰り返し、モダンで美しいインテリア照明として表現できたこと、そして何よりユーザーが思わず浮かべる笑顔というインタラクションに帰結できたことを高く評価したい。(時岡英互 教授)

空間演出デザイン学科:西口歩『kawalien project』

 

地域デザインのプロジェクトは多数あるが、単発のイベントではなくしくみをつくることは難しい。西口さんは、交換というしくみを組み立て、優れた活動とした。まちの困りごとと楽しいことを交換していくしくみは、ボランティアをするだけでなく、その後の交流でうれしさにつながり、また次が見えてくる。継続性のすばらしいしくみをつくり、それを自分でがんばってみなさんと協働し続けた。地域デザインの手本といえるだろう。(廻はるよ 教授)

環境デザイン学科:塚本菜『食空間の再構築 実家を食を中心に暮らしが展開される空間へ』

塚本さん自身の食への深い愛情を発端として、「食べる」と「作る」を介した交わりを促す住空間を再定義している。台所の歴史を調べた上で、水平面の連なりを手立てとし、軸組や機能性という現実にも向き合い、細やかに居場所を設計した。過不足なく美しい図面や模型は彼女の4年間の学びを物語っている。規模は小さくとも、丁寧に密度高く三次元空間を設計し、他者の目に留まり理解できるよう表現すれば評価されることを彼女は証明してくれた。(松本 崇 専任講師)

映画学科:村田陽奈(村田組 代表者)『折にふれて』

演技者は、今ある力を存分に発揮し、映画の登場人物として確かにスクリーンの中に生きている。監督やスタッフ陣は、一瞬の呼吸も逃さず切り撮ろうと撮影や編集などに臨み、その臨場感を映画の中に漂わせることで、観る者を虚構の世界にのめりこませる。画角や色調の変化、効果音、音楽、タイトル・クレジットに至る仕上げ作業における協働もさらに作品のクオリティを上げ、彼らが一年をかけてこの作品に挑み続けた情熱をも訴えかける。(水上竜士 教授)

舞台芸術学科:等々力静香 演劇公演『まほろば』

悩み藻掻きながらも普通に生きる10代から80代の登場人物が織りなす家庭劇『まほろば』。等々力は演出家として、自分とは年齢や境遇が異なる役を演じきるために登場人物同様に悩み藻掻く出演者たちを見事に「まほろば」へと到達させた。結果として、等々力が繊細かつ鮮やかに演出した『まほろば』の観客は、観劇を通して自分自身の「まほろば」を見出したのではないだろうか。観る人にそれだけの影響力をもたらした秀作だった。(平井愛子 教授)

文芸表現学科:上村裕香『ほくほくおいも党』

 

極左政党の父をもつ活動家二世の女子高生は家族を揺るがすような出来事を経て、やがて父と娘という普遍的な問題に向かっていく。この小説を書くにあたって、著者は多くの活動家二世と会い、ノンフィクションさながらのインタビューを重ねながら、獲得した素材をフィクションの企画・構成術で編集し、多面的かつ立体的な小説を生み出した。取材・編集・企画・構成のすべてが素材を小説化するために重要なメソッドであると実証したのだ。(山田隆道 准教授)

優秀賞
アートプロデュース学科:花島果椰『芸術と生活する――《サン・チャイルド》設置プロセスから考察するアートプロデュースの必要性――』

※学長賞該当者なし。

芸術作品が公の場に姿を現すまでには様々な過程があり、そのことが発表後の社会的反応に作用している。そのような考えのもと本論では、ヤノベケンジ《サン・チャイルド》が阪急南茨木駅前に設置されるまでの過程を関係者へのインタビューを通じて記述していく。作品の有り様を安易にアーティストにのみ帰属させるのではなく、そこに関わった多くの人々の営みの帰結とみなし、その過程を詳らかにした本論は、アートプロデュースの現場についての良質なドキュメントである。(林田新 准教授)

こども芸術学科:松浦芽依『わたしたちのかえるところ』

小川のせせらぎや、木々の擦れる音、葉の匂いや肌触り、虫の動き、そして側にいる人の温もり…自然の中で育ったこどもの頃の記憶を辿り、小さな出会い・触れ合いを集めた22のエピソードが豊かに描写されている。
絵本でも冊子でもない、まるで母なる大地を支える根っこのごとく創り込まれたフォルムは、見る者・読む者のあそび心をくすぐる。大切な人の笑顔や眼差しを身体中に感じたあの場所、 “かえるところ” が在ることの愛おしさ、感謝の念が溢れる作品である。(近江綾乃 教授)

歴史遺産学科:長田祐樹『日本における「牧谿猿」の受容と展開
―その解釈と変遷について―』

牧谿は中国・南宋時代の画僧で、日本の中世・近世における文化史、絵画史に大きな影響を与えたとされる。中でも「牧谿猿」は足利将軍家同朋衆、狩野派、長谷川等伯等が手本とした図像である。本研究は、高校時代から関心を持っていた牧谿の中で特に誰もが知る「牧谿猿」をテーマとして取り上げ、先行研究を再考するとともに、その図像及び構図のパターンを分析することにより、図像の持つ意味の変化を考察した。本研究は東洋絵画史における牧谿の位置付けと日本の中世・近世絵画への受容を追究する上で大いに意義あるもので、彼の今後の研究活動における布石になるであろう。(木村栄美 准教授)

大学院賞 美術工芸領域:髙尾岳央 

大学院賞 美術工芸領域:大澤一太

 

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  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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