REPORT2023.12.04

京都

「鞍馬の火祭」の内側で、京都で学生生活を送るいまだからできることを— ボランティアサークル京都.comの活動紹介

edited by
  • 上村 裕香

地域の大人と子どもが松明をもって練り歩く京都三大奇祭のひとつ、鞍馬の火祭が10月22日(日)に京都市左京区・鞍馬で開催されました。
鞍馬の火祭は、「サイレイヤ、サイリョウ」のかけ声とともに、剣鉾を刺したり、鉦と太鼓で囃したりしながら、松明をもって街道を練り歩く——平安時代前期からつづく、由岐神社の例祭です。天慶3年(940年)、朱雀天皇の詔により由岐大明神が鞍馬に遷った際、松明や篝火を焚いて行列をつくり迎えたことが起源といわれています。

 

今回は、そんな地域住民に親しまれる一年に一度の火祭を裏側から支えた、本学学生が主体となって活動しているボランティアサークル、京都.com(きょうとドットコム)の部員にお話を伺いました。

京都.comの干場美瑛さん(左)、吉浪玲衣さん(右)

京都の文化に触れる

京都.comは本学の学生と瓜生山学園が運営する京都文化日本語学校の学生が約40名所属するボランティアサークルです。歴史遺産学科の学生が京都の文化に触れることを目的に発足し、現在は学科・コースの垣根を越えて多様な学科の学生が活動に参加しています。
京都市内で行われる地域の催事や祭りに参加し、その活動を支えることを主な活動としています。
毎年8月16日に京都市左京区・如意ヶ嶽で行われる「五山の送り火」では、今年も送り火に使う薪の運搬や交通整備を手伝うボランティアを行いました。

 

活気あふれる例祭を支える

今回お話を伺ったキャラクターデザイン学科1年生の吉浪玲衣さんと、同学科1年生の干場美瑛さん(副部長)は「京都での地域行事や祭りに参加でき、地域住民の方とお話しできるのが楽しい」と口を揃えます。

「鞍馬の火祭では、当日の運営のお手伝いをしました。具体的には、街道の交通整備や駅前でのパンフレット配布ですね。当日は、ボランティア全体で30人、京都.comのメンバー6人が火祭をお手伝いしました。わたしはボランティアに参加するまで、鞍馬の火祭に行ったことがなくて、とにかく参加されている地域住民の方々の熱量に圧倒されましたね。火祭を見にこられている方は外国の方が多くて、京都に外国人観光客がもどってきたんだなあと感じました」

新型コロナウィルスの影響で2020年、21年は中止となった鞍馬の火祭は、昨年3年ぶりに開催されました。今年は、大小の松明を担いだ若者が鞍馬寺山門前に集結する神輿渡御も復活し、活気あふれる例祭となりました。

大小の松明がすぐ近くに
建物2階からも熱い視線が


京都でしかできないことをやりたい

京都.comは行事のたびにメンバー内でボランティアに参加する人を募り、手を挙げたメンバーがその都度参加する仕組み。
「今回の鞍馬の火祭のボランティアに参加したのはなぜか」を聞いてみると、干場さんは「わたしは関東出身で、鞍馬の火祭も名前くらいしか知らなかったのですが、大学を卒業して京都から離れたり、実家に帰って就職したりすることを考えたら、京都には4年間しかいられないと思ったのが参加した理由の根本にあります。京都でしかできないことやりたいなあと。そこで、京都の催事や祭りに特化したボランティアサークルがあると聞いて、すごくいいチャンスだと思って入部しました。もともと、地域の祭りや伝統文化に興味があったので」と語りました。

当日は叡山電車 鞍馬駅から鞍馬寺山門までつづく街道の交通整備を担当したという吉浪さんは、当日の参加者の多さに驚いたといいます。
火祭のクライマックスである午後9時頃には、大小100本以上の松明が鞍馬寺山門前に集まり、最後の諸礼を行います。空高く火の粉が舞いあがる情景は、一年に一度しか見られない、神秘的な光景です。

「わたしはあまり地域の祭りに参加したことがなかったので、観にくる方の多さにも、松明を担ぐ地域の方々の多さにも驚きました。未就学の子どもから大人まで、幅広い年代の方が松明を担いでいるんです。地域の人から愛されているお祭りなんだな、と感じました」


ボランティアの経験を制作に生かして

キャラクターデザイン学科ではイラストレーション・ゲーム・アニメ・CGの4つの分野から2つを選択して授業を受けている吉浪さん。学科での学びや作品制作と、京都.comでの活動は、一見遠いように感じますが、サークル活動で見聞きしたことが普段の制作に生かされている部分も多いといいます。

「祭りにくる人って特別な思いをもっていることが多いじゃないですか。今回の火祭でも、日本国内のみならず、外国からこられた方も大勢いらっしゃいました。交通整備していると、見物する方々の顔や出てくる言葉が素敵で印象に残るんです。街道で松明を見ると、やっぱりみんな足を止めちゃうんですよ。整備する役割としては『止まらないでくださーい!』って言うしかないんですけど(笑) みなさんが止まって見入ってしまうような魅力がこの祭りにはあるんだなと、印象に残っています。また、今回の火祭では、地元の方々の熱量や伝統を重んじる文化に触れられたこともうれしかったですね。毎回、そうした祭りで感じたことに着想を得て、『輪』をテーマに作品をつくっています」


学生だからこそ経験できること

京都.comの主な活動は、毎年8月に開催される五山の送り火、10月の鞍馬の火祭、2月の京都マラソンでのボランティア。どれも地域に密着した、京都を代表する大きな行事です。
そうした行事でボランティアする楽しさを、干場さんは「お祭りを内側からサポートするのが好き」だと語ります。「小さいころは見ているだけだから、きれいだなで終わっていたんですが、自分が内側に入ると見え方が変わって面白いなと思いました。裏側ではこんな準備をして、こんな時間から集合して、そして当日を迎えるんだという、その一連のことを知れることがやりがいにつながっています。学生だからこそ地域の中に入りこんで経験できることも多いです」

京都.comの次回の活動は、来年2月18日(日)に開催される京都マラソン2024でのボランティアを予定しています。前日の参加者受付や、マラソン当日の交通整備のお手伝いを担当します。
京都.comのメンバーではない学生も、行事のボランティアとして参加することができるそうです。これまでは地域の行事に参加したことがないという学生さんも、この機会に、京都で学生生活を送るいまだからこそできる経験をしてみてはいかがでしょうか。

鞍馬火祭のボランティア用ゼッケン!

京都.com
https://www.kua-sc.com/club/kyoto

 

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  • 上村 裕香Yuuka Kamimura

    2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。

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