京都芸術大学通信教育部は1998年4月に開設され、2023年の今年で25年が経ちました。「これまで、そしてこれから」をキャッチフレーズに25周年を祝い、各種イベントが行われているのをご存知の方も多いことでしょう。現在は1万5千人の学生を抱える大所帯となった通信教育部を長年支えてこられた上田篤副学長、上原英司学生部長、そして吉川左紀子学長をお迎えし、通信教育部の「これまで」、そして「これから」について大いに語っていただきました。
(聞き手・構成 大辻 都:『雲母』編集長、通信教育部教員)
――今年は京都芸術大学で通信教育が始まってから25周年ということで、さまざまな記念のイベントが準備されています。まず、この25周年という節目をどう捉えていらっしゃるか、上田先生からお話しいただけますか。
上田 通信教育部はこの先、100年、200年と続いていくものでしょうから、今の時点での数字に大きな意味があるわけではないですが、四半世紀でもありますし、一度ふり返って、通信教育部がこれから向かっていく先を考えるのにいい、そして大事なタイミングではあると思います。ですから、この年をイベント化して残るものにし、そしてこれを踏まえて次の時代につなげていきたいと思っています。キャッチフレーズの「これまで、そしてこれから」とはそういう意味ですね。
――上田先生、上原先生は、通信教育部開設のごく初期から本学の教育に関わっていらっしゃいます。当時からの歩みをふり返っていただけますか。
上田 僕は2005年から専任を務めています。
上原 僕は2007年からですね。
上田 通信が開設された1998年当初は、学生も教職員ももう一緒になって、熱い思いで通信教育部を作り上げたと聞いています。僕らが加わったのは、そうした地盤固めができた少し後ですね。
その頃から現在までは、主に3つの時期に分けられると思うんです。第1期は開設初期の時代で、スクーリングは3日間の対面でしたし、レポートのやり取りも郵便しか手段がなく、赤ペン先生みたいに手書きで添削していました。そうやって通信の教育を地道に培ってきたわけです。その次の大きな転換期としては、インターネットの普及がありました。これにより、今まで大学に来られず学べなかった人たち−−たとえば忙しい会社員や家庭を持つ方々−−も本学で学べるようになりました。「手のひら芸大」と呼ばれる芸術教養学科が開設され、オンラインで学べる仕組みができ、それが後に全学的に広がることになりました。それが第2期だと言えます。
そこに新型コロナ感染拡大が起こり、さまざまなことが劇的に変わりました。それまでもオンライン活用はされていたわけですが、コロナの影響で有無を言わせず仕組みを工夫する必要が出てきました。教員も必死でしたが、学生も大変だったでしょう。でもそこで可能性も見えてきました。つまり、これまで培ってきたアナログの泥臭い教育手法と、かつてはできなかったことを可能にしてくれるデジタルの活用をうまく融合させてゆくこと。そのスタートの年として25周年を位置づけ、しっかり歴史に残していきたいと考えています。
――ひと口に通信教育といっても、創成期は今とはだいぶ違っていたようですね。
吉川 德山詳直前理事長が、周りの大反対を押し切って、芸術大学で通信教育を始めた決断力は、あらためてすごいと思います。息子さんの現理事長のお話では、人の言うことは全然聞かない人だったから、大反対も何も関係なかったとのことでしたが(笑)。
上田 立ち上げはほんまに大変やったと思います。最初の数年は、学生の皆さんの熱意のこもった学びの反響を教職員が正面から受け止めながら作り上げたようです。
吉川 そこに上田先生という頼もしい味方が着任したのは、大学にとって本当に幸運だったと思います(笑)。
上田 いえいえ、ベースがあったおかげです。当初の大変さを知っておられるのは上村博先生、松井利夫先生、通学の佐藤博一先生などひと握りの人になってしまいましたが。一番大変やったのは、カリキュラムの立ち上げで100冊を超える大量の教科書を開発する必要があって、それがめちゃくちゃ大変やったと聞いています。今またそれらを更新していく時期に差しかかっています。
学びへの熱に圧倒される
――先生方それぞれが着任された当時の印象はどうだったでしょうか。
上田 僕が初めて本学に関わったのは、2004年に非常勤講師としてでしたが、当時の若かった僕は正直、通信教育で社会人が学ぶ場のイメージを持てていませんでした。よくサボっていた自分の学生時代と同様に思っていたわけです。それが初めて3日間のスクーリングを担当した瞬間に一気に考えが変わったんです。相手は僕と同じくらいか年上の方々だったんですが、授業中に気を抜く気配は微塵もなく、むしろ貪欲に、もっと教えてくれという感じでした。その熱量のすごさに圧倒されたし、こんな学びの場があるんだと知りました。
その後、縁があって専任になりましたが、多地域多世代の社会人が芸術を学ぶことが「藝術立国」という本学の理念につながることに気づき、通信教育にのめり込んだというところがありますね。他大学でも教えていましたが、こちらの通信の方のほうがまったく気が抜けない。全力で学生と対峙しなければならず、それで自分自身もずいぶん鍛えられました。そして通信の魅力に気づきましたね。僕らも教えてみて初めてわかるように、学生の側も年齢にかかわらず学んでみることで一気に価値観が変わることがあるように思います。
かつて教鞭を執られた梅原賢一郎先生は、スクーリングの一週間前から酒を抜くと言われていました。スクーリングは学生と向き合う勝負の場だからすべてを整えるのだと。その気持ちは僕も今も同じですね。
上原 僕も以前、他大学の通学部で教えていましたから、通信というとあまり学生の皆さんと接する機会がないのかなぁと思いながら着任しました。でも、確かに直接会う機会は少ないのですが、皆さんの熱意がすごいので、むしろ通学生以上に親しみを感じることができました。通信ってこんなに熱気のあるところなのかと驚かされましたね。
上田 今、オンラインのみで卒業する学生も増えていますが、Zoomなど画面越しであっても相手の思いは感じられますよ。すべての先生方が、それは感じられていると思う。そういう学生と教員の関係は継承していきたいですね。
吉川 なるほど。おふたりにとって通信は進化し、発展している。そして形は変わっても学生たちの学びへの熱は、変わらずにずっと継続しているということですね。
上田 オンラインになって、若年層が増えるなど、学生の年齢分布は時代に応じて変化していながらも、実に多様な年齢層の方が在籍されています。つまり少しの変化はあるんですが、根底にある学びへの熱は一緒やなと、毎年4月に、いやすでに入学説明会の時から感じますね。
吉川 私も直心館での入学式、卒業式を何度か経験しましたが、いつも学生さんたちのエネルギーというか、熱い思いを感じますね。
我が心の通信添削課題展
――上田先生が来られた2004年頃は、まだ創成期のマグマが煮えたぎるような時代だったのでしょうか。それとも学びの場として、ある程度固まってきた印象はありましたか。
上田 ある程度は固まってきていましたね。でも何千人の学生が集まるようになり、その学生たちを相手にスクーリングや添削をよりスムーズに行うということに組織として慣れていく時期でもありました。
上原 われわれが入ってきてまもなく、通信開設10周年を迎えましたね。
――10周年のイベントというのはどんなだったんですか。
上田・上原 「我が心の通信添削課題展」!
上田 学生が教員からもらったレポートや作品の添削文の中から心に残ったものと、その時の感情を川柳で表現したものを応募して、学生委員会のキュレーションにより学内展示が行われたんです。
上原 こんな厳しいことを書かれたというものもあれば、こんなにていねいに指導してもらえたという添削文もあり……。
――何と、そんな異色の企画があったんですね! 最近の学内イベントとはだいぶ趣向が違いますが、それは皆興味を持ちますね。
上田 それに加えて教員も添削する中での気持ちの川柳を詠む。その時書いたものを僕は今でも研究室に貼っています。「おかん似の 文字にためらふ D評価」(笑)。
吉川 お母さんを思わせる筆跡で不合格にしにくかった(笑)。上田先生の困った顔が目に浮かぶようです。
――それにしても「我が心の通信添削課題展」とは、最近の通信教育部ではなかなか出てこない発想ですね(笑)。
上田 やはり今よりアナログの添削やったんで、学生の方も鮮明に記憶しているし、僕らの方も、もしかしたら今以上に記憶に残ったということがあったんでしょうね。
だから昔を知っている学生の中には、通信教育部が変わってしまったという印象を持つ人もいるかもしれません。確かに変化した部分もあるけれど、仕組みが変わるのは、今の学生のライフスタイルが変わっているから。ただ、僕らは、当初の学生たちの熱意や工夫をベースに教育方法も作り上げていますので、通信教育部の芯の部分は何ら変わっていないんです。25周年の節目として、あらためてそのことをきちんと伝えていきたいと思っています。
ちょうど今、陶芸コースの1期生が25周年を迎えた今年、展覧会を開催されていたのですが、僕らにとってもめちゃめちゃ嬉しいことですよ。そういう卒業生たちとつながっていくことも大切にしたい。大学という場は、もちろん先生方も変わっていきますし、僕らの知らない時代の学生もいるんだけれども、卒業してからも、大学や通信教育部への愛情を持ち続けてくれている人が多く嬉しいかぎりです。
吉川 本当に大事なことですね。同窓会のイベントでも、本学の存在を大切に思ってくれている卒業生が多いなと感じます。皆さん、学生だった頃の話で盛り上がって、私にもいろんなエピソードを教えてくれるんです。どれだけ苦労して単位を取ったか、一緒に学ぶ仲間たちがどれほど助けてくれて、支えになったか。本当に楽しそうで、これこそ通信教育の学びの姿だなと思わされます。在学している間だけでなく、その気持ちがずっと続いていくんですね。
上原 通学部の学生は卒業後社会に第一歩を踏み出していくわけですが、通信の学生の場合は、学校を卒業して、社会に出て、もう一度大学に入ったことが思いもよらない新しい人生の第一歩につながることがあるので、通信での学びが学生の皆さんの心に深く刻まれていくような気がします。
吉川 私はこの大学に来るまで、通信教育というのは通学の学びのつけ足しぐらいのイメージを持っていたんです。今はまったく違いますね。通信教育独自の魅力や可能性があると思います。通信教育に力を入れている数少ない芸術大学として、責任も感じています。
過去から未来へのヤジルシ
――開設25周年記念のさまざまな企画についてご紹介ください。上原先生は20周年の際にも学生部長としてイベントを牽引され、またシンボルマークのデザインもされています。今回は、前回とはまったくイメージの異なる新たなデザインを考えてくださいましたが、そのアイディアや意図なども教えていただければと思います。
上原 まず25周年企画全体のテーマは「これまで、そしてこれから」です。過去をふり返ることは大事だけれど、ただ昔を懐かしむというだけでなく、つねに前に進んで、挑戦していくところがこの大学らしさであると思っていますので、そうした意味を込めたスローガンにしました。
20周年の時はややお祭り的というか、周年を祝うことが前面に出ていましたが、今回は25周年という節目について教職員一同がじっくり考え、一丸となって一歩先に進もうという気持ちを大事にしたいと思っています。
――教職員に向けてシンボルマークを最初に提案してくださった時は、正直「え、何?」と驚きました。他にもいくつか案を出していただきましたが、最終的に「え、何?」と思わせるこのデザインに皆が賛同しましたね。
上原 シンボルマークは「25」という数字をベースとしながら、これまで歩いてきた道のりを表す矢印と、これから行く道のりを表す矢印を組み合わせました。そして黄色の部分がそれぞれのスタート地点です。色は芸術大学らしく、色の三原色であるシアン、マゼンダ、イエローを使ったポップな配色にしました。すべての教職員の皆さんに25周年について考えてほしかったので、このような缶バッジにして身に着けてもらうことにしました。
吉川 通信に入学して1年目、2年目ぐらいの学生さんは、25周年と聞いてもたぶんすぐにはピンと来ないでしょうけれど、教職員のこれまでの思いとこれからの思いの両方を、学生の皆さんへのメッセージとして伝えられるといいですね。教職員がどれだけ熱い思いでやってきたか、やっていこうと思っているか、その熱意を示す企画を作っていただきたいと思います。
――他にも、年度を通してさまざまなイベントが用意されていますね。
上原 まず8月に瓜生山キャンパスで開催される「サマーフェスティバル」の中で、卒業生の作品を対象とした全国公募展を行いますが、例年の大賞、優秀賞に加えて、今年は25周年特別賞を用意しました。こちらの賞は小山薫堂副学長がプレゼンターを務めてくださる予定です。同じくサマーフェスティバルで行われるフリーマーケット「アート・マルシェ」は、今年度初めて12月の東京懇親会に合わせて東京でも開催することとなりました。
また、サマーフェスティバルでは、毎年学外からゲストを招いて特別講義を開催していますが、今年は通信教育部の歩みをふり返り、未来を考えるという意味で、上田篤先生、松井利夫先生、後藤吉晃先生によるトークショーを予定しています。
上田 今お話ししたような創設以来の話もしますが、若い先生にも入っていただき、これからの通信教育部の話もしていきたいと考えています。このメンバーからすると、僕は若い方ということでいい?
上原 上田先生はベテランと若手をつなぐ、シンボルマークでいえば黄色のマルの部分ということですね(笑)。
――とても貴重な機会ですね。こちらの内容は10月のホームカミングデーでも動画配信し、全国の卒業生、在学生も聞けるとのことで楽しみです。
上原 夏の間は、瓜生山キャンパス人間館1階のブレス・カフェとのコラボ企画もあります。シンボルマークカラーにちなんだ、イチゴジャム、キウイジャム、柚子ジャムを炭酸ソーダで割ったカラフルな限定ドリンクが販売されますし、今年度の収穫祭開催地の日替わりご当地カレーもメニューに加わります。その他、まだまだ学生の皆さんが参加いただける企画を考えていますので楽しみにしてください。
京都からの発信、地域をむすぶネットワーク
吉川 通信教育部の収穫祭イベントで、去年、杉本博司さんが設計された小田原の江之浦測候所見学に参加しました。当日は杉本さんとともに長年この測候所の設計や建築に携わっている、新素材研究所の榊田倫之さんも参加されていて。ひとつひとつの建物や作品のコンセプトを詳しく説明してくださって、素晴らしく贅沢な時間でした。
上田 7月にはやはり収穫祭イベントとして、新潟・佐渡島訪問が予定されています。佐渡には宮大工を育てる専門学校があるのですが、この学校と本学通信教育部の間には併修制度が設けられているんです。この制度で学んだ中からも卒業生が出て、また新たな交流が生まれたらいいと思っているところです。
吉川 宮大工を育てるというのは面白いですね。佐渡島といえば和太鼓の鼓童の活動でも有名ですね。
――収穫祭は、最近は申し込む学生が多く、抽選になるほどですね。
上原 現在、年間8箇所で開催されていますが、もともとは年3回の開催でした。20周年記念イベントがきっかけとなって、今のように盛んになりました。
上田 大学のウェブマガジン『瓜生通信』でもていねいに開催地レポートをしていますので、残念ながら抽選に漏れた方もぜひ訪ねてみてほしいですね。
通信教育部の場合、京都の大学であることに加えて全国各地に学生がいるという強みがあります。以前は全国各地を訪れて行う実験的な授業をしていたこともあり、それぞれの地域からの情報をキャッチできる仕組み作りはしていきたいと思っているんです。そうした卒業生、在学生のネットワークを整え、学外の学び場を作っていくことも目標です。収穫祭の開催は、それを目指した取り組みでもあります。
吉川 収穫祭の開催地として「京都」があってもいいのではないかと思いますがどうでしょうか。全国の学生さんたちの中には、京都にある芸術大学、というところに魅力を感じて入学している人も多いと思うんですよ。私が所長を務めている本学の文明哲学研究所の企画で、今度、建築家の岸和郎先生にお願いして、京都の寺町通をフィールドワークするんです。寺町通には岸先生ご自身が設計した建築物もあれば、明治時代に建てられた古い建物もある。それについてレクチャーしていただくという企画です。岸先生から少し内容を伺ったんですが、聞いただけでもちょっとわくわくするお話でした。通信の学生さん向けにも、そういう京都の歴史や文化を知るイベントを企画していただくのもいいんじゃないかと思います。
上田 京都では瓜生山懇親会が開催されているので、収穫祭の開催地にはしたことがなかったですが、確かに京都を学びたいという学生は多いかもしれませんね。
吉川 住んでいても、意外に知らないことは多いんです。本学は京都にある芸術大学ということをもっとアピールしていってもいいと思いますね。
上田 京都といえば、僕は、8月16日の五山の送り火をコースの学生に向けて2年連続でライブ配信しているんです。
――上田先生が個人的になさっているんですか!
上田 そうです。キャンパスの上から。去年は豪雨になって中止になるかもしれず、大変でした。でもそれを見た学生が興味を持って、後日、遠くから京都まで来てくれたこともあります。
吉川 五山の送り火にしても、直に見るのとテレビやネットで見るのとではやはり違いますよね。通信の学生さんたちにも、京都を直に味わう体験というのをぜひしてほしいな、と思います。
30周年へ、そして100年後に向けて
――それでは最後に30周年に向けて、あるいはもっと先に向けて、通信教育部の未来の姿について、先生方のヴィジョンを聞かせていただけるでしょうか。
上田 いつでも、どこでも、いつまでも、いろいろな背景を持つ社会人が芸術を学べる場にしていきたいですね。30周年でもまだ足りないかもしれないけれど。でも、創設の時期以来、アナログ時代からさまざまな教育手法を開発してきた蓄積を持つ僕らだからこそできることがあると思うんです。世の中には、まだ学びたくても学べない社会人はたくさんいると思うので、そういう人たちに生涯芸術を学び続ける場を提供してゆくのが僕ら通信教育部の使命だと思っています。
「これまで、そしてこれから」ということで言うと、今の在学生やこれから入ってくる方々と向き合うと同時に、卒業生ともしっかりつながってゆく。学びのコミュニティですよね。将来的な理想は、芸術に興味のあるすべての人が、うちの通信教育部に来れば一緒に学ぶことができたり、ディスカッションや交流ができるというような、そういう共同体のような場ができればと思っています。
上原 通信教育部の成長には、インターネットの進歩や普及が大きく関わってきました。これからもインターネットの発展とともに成長すると思いますが、それだけが通信教育部の成長ではありません。これからの通信教育部は、技術の進歩以上に、われわれ教員の成長が大事なのではないでしょうか。オンラインですべて学べることが売りなのではなく、本学独自の魅力的な学びが受けられるということが第一の売りにならないといけませんね。われわれもどんどんバージョンアップすることが大切です。
吉川 通信教育部に在籍されている方に聞いたことですが、入学前はこれこれの芸術を学びたいという思いだけだったけれど、じっさい入学してみると、他の学生と一緒に学ぶことが本当に楽しく、それがまったく予想外のことだったそうです。一度も直接会ったことがない人と、助けあったり励ましあったりしながら学ぶ楽しさ、ですね。大学側としては、どういう場を作っていけば、学生さんたちがもっと豊かな経験ができるのか、いろいろアイディアを出して考えていく必要があります。うちの大学のいいところは先生たちのフットワークの軽さで、それがひとり、ふたりの先生ではなくて通信教育全体の風土になっていることですね。これからも新しい取り組みや企画の提案がどんどん出てくることを期待しています。
上田 学びの内容に関して言えば、もともと興味のなかった、予期していなかったことに出会え、開眼していくのが学びの醍醐味だと思うんです。自分のコースに入ってきた学生が、途中で別のコースに変わってそこで卒業する。何だか寂しいような気持ちもありますが、それも実はいいことですね。うちの大学に入ったことで、また別の学びに出会えたということですから。もちろん最初の目標通り、一直線に卒業を目指すのは素晴らしいんですが、もし新しいことに興味を持てたら、どんどん寄り道してほしい。寄り道は最高の学びやと思います。そしてその先に卒業までたどり着けた人はすごいエネルギーを持った人です。そんな卒業生には、在学生にもぜひ刺激を与えてほしいですね。
昨年から、通信教育部学生、教職員が交流できるSNS、airUコミュニティがスタートしています。これまでのツールはすべて在学生のみのものでしたが、airUコミュニティの整備で、卒業生も関わり続けられるようになりました。だから「これから」ということで言えば、多様な学びを支えるのももちろん、学びを続けるという点での支援を続けていきたいと思います。
――入ってみたらまったく予期していなかった経験ができる。人生でこんな素敵なことはありませんね。通信教育部の豊かな未来が見えてくるお話でした。今年度後半の記念イベントも楽しみです。先生方、本日はありがとうございました。
2023年7月3日 瓜生山キャンパスにて
※本記事は、京都芸術大学通信教育部補助教材 雲母199号(2023年秋号)発行:2023年8月25日の特集内容を転載したものです。
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